円形脱毛症(AA:alopecia areata)の患者さんに、「アロビックス外溶液」が処方されていました。
「アロビックス外用液」は、有効成分がカルプロニウム塩化物なので「フロジン外用液」の後発だと思っていたのですが、調べたところ「フロジン外用液」も後発医薬品でした。
患者さんによると、ここ数週間で急に髪の毛が抜けた部位が数ヶ所あるとの事で髪の毛を掻きあげながら脱毛部位を見せて下さいました。
円形脱毛症について知識が乏しかったので、日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版より調べてみました。
2010年のガイドラインから7年経過した改訂により、フロジン外用液の推奨度はどうなっているのでしょうか?
円形脱毛症(AA:alopecia areata)とは?
円形脱毛症は皮膚科の門前薬局では、脱毛疾患の一つとしてよく見られるかと思います。
男性型脱毛症の発症には遺伝的な要因と男性ホルモンが関与していますが、円形脱毛症の発症原因は肉体的・精神的ストレスが引き金となって起きる自己免疫疾患だと考えられています。
円形脱毛症は遺伝的な要因が関係していると言われ、家族など近親者にAA患者がいると発症率が高い事がわかっています。
しかしながら精神的ストレスと円形脱毛症の直接的な関連性については、はっきりとした科学的な根拠がなくまだわかっていないみたいです。
円形脱毛症の治療方法は?
脱毛している箇所や面積にもよりますが、脱毛部位が少ない場合であれば多く(約8割程度)の患者さんが1年以内に毛髪が回復することが報告されています。
ガイドラインによると円形脱毛症の治療は対症療法が基本で、EBMに基づく確立された治療方法は少ないようです。
推奨度が高いもの(B:行うように勧める)は以下の4つです、ここには「フロジン外用液」は入っていませんでした。
- ステロイド局所注射療法 B(*小児には原則行わない)
- 局所免疫療法 B
- ステロイド外用療法 B
- かつらの使用 B
薬局で見る機会が多く、最も処方する事が多いステロイド外用療法は(推奨度:B)です。
単発型~融合傾向がない多発型AAに対し、1日1~2回 strong・very strong・strongestクラスのステロイド外用療法を行うよう勧められています。
25%以上の毛髪再生においてステロイド塗布群が有意に優れ、1FTU(毛髪部で処方されることの多いローションでは1円玉大の量)を基準に脱毛部位だけでなくかゆみ等の違和感のある場所に塗布しても良いとされています。
フロジン外用液の推奨度は?
まずフロジン外用液の名前の由来から調べてみました。
名称由来:「不老人」に由来し、その語呂に合せてフロジン(FUROZIN)と命名
昨今アンチエイジングが流行していますが、「老いない人≒不老人」という時代を先取りしたネーミングセンスには畏敬の念を抱きます。
効能効果にはしっかりと「円形脱毛症」が含まれています。
- 円形脱毛症(多発性円形脱毛症を含む)
- 悪性脱毛症、び漫性脱毛症、粃糠性脱毛症、壮年性脱毛症、症候性脱毛症など
- 乾性脂漏
- 尋常性白斑
そしてフロジン外用液の推奨度は…
- カルプロニウム塩化物の外用療法 C1
「単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい」でした。
プラセボとの比較で有意な発毛効果がある弱い根拠がありますが、セファランチン、グリチルリチン、ステロイド等の併用療法としての位置づけのようです。
推奨度C1だと、他の選択肢の一つである「治療せずに経過観察のみ行う:C1」と同じになります。
何もしないのは患者さんからすると何となく不安に感じるかもしれませんが、システマティックレビューでは「プラセボと比べ明確に発毛を促進させる治療法はない」との事なので、心理的な面に配慮しながら「治療せずに経過観察のみ行う:C1」も選択肢の一つとなりえるようです。
また円形脱毛症の治療で使用される漢方薬として、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎、加味逍遥散などがありますが、ガイドラインでの推奨度は「推奨度:C2」でした。
漢方薬も証があえば効果があると聞きますので、漢方薬により患者さん自身のストレスを和らげたり体質の改善が行われることで効果があるのかもしれません。このあたりは先生の考え方によるかと思います。
参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
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