漢方薬専門の薬局で働いている薬剤師でないと、漢方薬について苦手意識を持つ薬剤師さんは多いかと思います。
毎回ツムラさんの医療用漢方製剤一覧のポケット版を見ながら唸っています。
この漢方がどのような症状に効果があるのかは知っていても、本当にその漢方薬がその患者さんに適しているのか?
私にはそれがハッキリとわからないのです。
がっちり体形だから実証、痩せているから虚証?そんな簡単に判別ができないのです。
私はとても漢方薬の処方が苦手です、何度書物(本だけは沢山あります)を読んでもすぐに忘れてしまいます。(これは私の問題か…)
①陰と陽
調剤薬局の薬剤師であれば、まず症状を確認して適応に問題がなければ処方箋通りに漢方薬を出す事になります。これらの基本的な概念を知った上で服用後の聞き取りをする事で、証があってないのかも?と気がつく事ができるので多少は助言もしやすいかと思います。
全身的な状態を診る(必ずしも虚実とリンクするわけではない)
陰証:苦痛少ない、顔面蒼白、手足の冷え、尿色薄い、下痢傾向
陽証:苦痛多い、顔色赤い、口渇があり冷たいもの好む、尿色濃い、便秘傾向
②虚と実
病的反応の状態を診る
虚証:声小さい、疲れやすい、顔色悪い、胃腸が弱い、喜按認める(押さえると気持ちいい)、脈に力がない、寒がり(抵抗力が低下してる状態)
実証:声が大きい、体力がある、血色がよい、胃腸が強い、拒按認める(押さえると気持ち悪い)脈に力がある、暑がり(防御反応がまだある状態)
虚実の判定は難しく専門家であっても人により判断が異なる事がある。よって判別が難しく虚証を実証と誤って治療する(症状の悪化を招く)位であれば、虚証として治療してから様子を見るのも間違いではないようだ。
あくまで目安であり実際にはこの通りでない事もあります。麻黄を含む葛根湯は実証向きだから、虚証の方には向かないと知っていても、この虚実の判断が難しいと感じます。
③表と裏
防御反応の場所を診る
表証:体の表面(皮膚や皮下組織、表位の筋肉や血管、頭部、四肢、背部)
裏証:体の内部(胃と十二指腸を除く腸管、腸間膜や接する組織)
半表半裏証:表と裏の中間(横隔膜に隣接する臓器:胃、肝、脾、肺、心臓、肋膜、咽喉、気管支)
これまでの証から、表実、裏実、表虚、裏虚と判別し漢方薬を使い分ける。
④寒と熱
漢方においては体温は関係なく、熱があっても寒気がすれば寒証として温める治療を施す。
寒証:寒がり、顔面蒼白、手足の冷え、温かい飲食物を欲する等
熱証:暑がり、顔色紅色、手足ほてり、冷たい飲食物を欲する、口渇等
⑤五臓
中医学で内臓は、五臓六腑で表し体質の特徴を把握する手掛かりとなる。五臓は五行説(火、水、木、金、土)に基づいている為、相関図から各々が密接に関係している。
六腑(胆、胃、小腸、大腸、膀胱、三焦)飲食物の通路
【五臓により各体質の特徴がわかる】
肝:血の貯蔵、気の流れ
(目の疲れ、痙攣、怒りっぽい、胆嚢の異常が出やすい)
心:血液の運搬、精神や思考力
(舌に白や黄色の苔、血液循環悪、冷え、動悸、イライラ、消化機能の悪化)
脾:気血を産生
(味覚異常、四肢の冷え、倦怠感、肌荒れ、無気力、胃もたれ)
肺:気を巡らせる、水分の運行調整
(くしゃみ、鼻づまり、味覚機能低下、乾燥肌、体温調節異常、不安症)
腎:生命エネルギーの源
(耳鳴り、聴力障害、排尿障害、足腰軟弱、腰痛、骨粗鬆症、恐怖感)
⑥気・血・水
人体の生命を支える様子として気・血・水の3要素がある。
気:身体の機能や働きといったエネルギーに関する要素(気虚、気滞)
血:主に血液を指す(血虚、血滞)
水:津液とも呼ばれ体液(組織液や分泌液など)を指す(津虚、水滞)
それぞれ不足や停滞または逆流した状態を判断する事で、現在の体の状態を診る。これらは中医学での呼び名と日本での呼び名が異なる場合がある。
⑦六病位
病態を陽証と陰証を各3期に分類した時間的な病態の変化を表したものを六病位とよぶ。
基本的には陽証から陰証へ時間と共に進行していくが、順番が乱れたり同時に起こる場合がある。病期によって使用する処方は異なったものとなる。
体の抵抗力、防御反応をみながら、表証や裏証、半表半裏証も併せて判別する必要がある。
参考:ツムラ漢方スクエア、漢方薬の服薬指導(南山堂)
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