【読書感想】深夜薬局 歌舞伎町26時、いつもの薬剤師がここにいます

独立開業
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深夜薬局

コロナが少し落ち着いてきたので、積ん読(つんどく)していた「深夜薬局 歌舞伎町26時、いつもの薬剤師がここにいます」(小学館集英社プロダクション)をようやく読む事ができました。

ネオン街の一角に、夜8時から営業する薬局がある。

訪れるのは、親からの虐待を告白する多重人格の女性やコロナ禍で生活苦を訴える風俗嬢、「眠れない」とあせる入試前夜の高校生など、その事情はさまざま。

誰かに聴いてほしい。でも、誰にも言えない。

「何か」を抱えたお客さんとたった一人の薬剤師との物語。

引用:小学館集英社プロダクション

深夜〇〇といえば、深夜特急に深夜食堂など色々とあります。

中でも沢木耕太郎氏の小説である深夜特急にはかなりの感銘を受けました。

中学生の頃に読んだ時は、世界中を旅するバックパッカーにずいぶん憧れたものである。

そんな沢木耕太郎氏について調べた所、横浜国立大学を出て富士銀行に就職するも出社初日に退職を決め小説家になったそうだ。

現在は既に75歳になられているとの事。

今後の人生をどのように生きるべきか悩んでいる自分としては、沢木耕太郎氏の生き方が非常に眩しく見える。

あの頃(中学生の頃)に深夜特急を読んだ時と、今の私自身もかなり変わっているのでもう一度読み直してみたい小説である。

いつも通り話が脱線してしまった。

ニュクス薬局

深夜薬局とは、歌舞伎町で深夜の時間帯にやっている調剤薬局「ニュクス薬局」の事である。

管理薬剤師の中沢宏昭氏は、チェーン薬局で勤務した後に貯金1000万円をもとにニュクス薬局を開業したそうだ。

そんなニュクス薬局の営業時間は、書籍には20時から翌朝9時(現在は移転して16時30分~3時30分に変更されている様子)で歌舞伎町という夜の町に合わせた時間帯に営業をしている。

そして処方箋を扱う調剤薬局として存在するだけではなく、地域の特性に合わせて滋養強壮剤キヨーレオピンのボトルキープや、コンドームを一個づつバラ売りしたり、近所であれば処方薬を配達したり、遠方であればバイク便と契約して薬を配達したりと様々な工夫をしながら地域の健康に寄与している様子がうかがえる。

なおOTCでは解熱鎮痛剤の「ロキソニン」や、膣カンジダの抗真菌薬である「エンペシド」(クロトリマゾール)、妊娠検査薬などがよく売れているそうだ。


深夜薬局をめぐる10の物語

この書籍では中沢宏昭氏が、薬局で出会った人々との物語が紹介されている。

第2章もくじ

1、妻子あるお客さんの子を妊娠したキャバ嬢
2、ホストとバーテンダー、気の合うふたり
3、「別荘」でのクチコミでやって来た男性
4、多重人格を告白するガールズバー店員
5、嵐の夜に駆け込んできた女性の傷
6、「ミスが多い」と悩む事務員の決断
7、AV出演を相談する性風俗店の女性
8、彼氏の学費を工面したいと悩む女性
9、コロナ禍で落とした命
10、獄中からの手紙

歌舞伎町という地域ならではの人々の物語に、悲喜交々を感じずにはいられませんでした。

地方から仕事でここに来ている人々は職業柄かなりのストレスを抱えていて、メンタルに不調をきたす事が多いそうだ。

そしてお客さんや患者さん達は、2~3年で入れ替わり新たな人生を踏み出して行く。

そんな人々の話をしっかりと聞く事で孤独な心に寄り添い、そっと送り出す中沢宏昭氏は素直に尊敬に値する薬剤師だ。

「夜の女神」が歌舞伎町になじむまで

私がこの書籍で一番興味深く読んだのが第3章「夜の女神」が歌舞伎町になじむまでである。

この章では中沢宏昭氏の高校生時代までさかのぼり、ニュクス薬局を始める事になったエピソードや開業当初の苦労話などが描かれている。

ここで出てくる「そうは問屋が卸さない」には、大変失礼だが思わず笑ってしまった。

そうは問屋が卸さない

そんなむりな、かってな要求や注文に簡単に応じられるものではない。また、そんなにこちらの思ったとおりにはうまくいかない。「はっきりとした返済計画もないのに、金を貸せと言われても、そうは問屋が卸さない」

〔語源〕そんな安値をつけたのでは問屋が品物を卸してくれないの意から。

引用:imidas

調剤薬局で働いている薬剤師にとってはよくわかる話であるが、開局時には卸(アルフレッサやスズケン等)との関係性が非常に重要である。

調剤薬局が受け取る診療報酬は、窓口で直接受け取る患者負担分保険機関負担分に分けられます。

その保健機関負担分は、基本的には1ヶ月毎にレセプト(診療報酬明細書)を作成し翌月10日までに審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)に提出して審査を受けてからようやく診療報酬として2~3か月後に支払われます。

しかも内容に問題があった場合は、査定(減点)、返戻(再提出)といった事になり支払いが更に遅れてしまう可能性があります。

よって医薬品の卸は新規の取引に関しては慎重であり、弱小個人薬局や面薬局に対して支払いサイトはかなり渋くなる傾向があります。

もしも新規で面薬局を開業する予定であれば、使う予定はなくとも日本政策金融公庫等から低金利で長期の融資を受けておくと最初の2~3ヶ月を安心して乗り切れそうですね。

そして最後に「深夜薬局」を読んで、地域に必要とされる薬局として健康をサポートできるように頑張りましょう!

おわり

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