新しく発売される選択的β3アドレナリン受容体作動薬Beova(ベオーバ)の勉強会がキッセイ薬品工業株式会社さんよりありました。
発売準備中ながら早々とやっていただけたのは、製造販売元の杏林製薬株式会社との2社併売といった事情もあるのかもしれません。
選択的β3アドレナリン受容体作動薬は、アステラス製薬のベタニス(ミラベグロン)が2011年9月の販売開始なので実に7年ぶりになります。
まず名称の由来ですが、Beta 3 agonist for the patient with Overactive bladderより来ているそうです。担当のMRさんは「ベタニスを超えていくつもりなので、ベタニスオーバーという気持ちです」とおっしゃっていました。覚えやすくてとても良いと思います。
ベオーバ(ビベグロン)の構造より特徴
- ピロリジン骨格により・代謝安定性の向上・CYP阻害作用リスク低減
- 右側環状構造の最適化により・高脂溶性・遺伝毒性のリスク・CYP阻害作用リスク低減
- 立体異性体の選択によりβ3受容体への高い選択性
キッセイ薬品HPより出典
適応:過活動膀胱(※OAB)における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
※尿がたまる前に膀胱が収縮してしまう
用法用量:1日1回50mgを食後投与
作用機序:膀胱平滑筋に存在するβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。排尿機能には影響を及ぼしにくいとされている。
ちなみに同じく過活動膀胱(OAB)に使用される事の多い抗コリン薬の作用機序は、アセチルコリンが膀胱の平滑筋ムスカリン受容体に結合するのを阻害する事で膀胱の収縮を抑制します。
よって抗コリン薬の(バップフォー:プロピベリン塩酸塩)、(ベシケア:コハク酸ソリフェナシン)、(デトルシトール:酒石酸トルテロジン)、(ウリトス、ステーブラ:イミダフェナシン)などでは、副作用である口腔内乾燥、便秘、排尿困難、残尿量の増加、尿閉などが心配されます。
選択的β3アドレナリン受容体作動薬であるベオーバでは比較的安心して使用できると考えられています。
臨床成績はPGIによる過活動膀胱(OAB)患者の自覚的改善度の有効改善割合は、プラセボ群76.2%に対して90.8%との事でした。
ベタニス(ミラベグロン)との違いは?
ベタニス構造式
MRさんが最も強調されていたのはやはり安全性の高さをおっしゃっておられました。
- 「生殖可能な年齢の患者には投与をできる限り避ける」という警告がない。
- フレカイニド酢酸塩(タンボコール)やプロパフェノン塩酸塩(プロノン)という併用禁忌がない。
- 肝機能、腎機能障害患者での用量調節が不要である事など使いやすさを前面に押し出しておられました。
過活動膀胱(OAB)の患者さんは加齢とともに増加傾向が認められているのですが、若年層でも過活動膀胱(OAB)の患者さんは一定数いらっしゃるので気にせず使用できるといった事は、かなり大きなアドバンテージかと思われます。
併用禁忌もなく、併用注意も以下の5種類だけになります。
- アゾール系抗真菌剤イトラコナゾール等
- HIVプロテアーゼ阻害剤リトナビル等
- リファンピシン
- フェニトイン
- カルバマゼピン
高齢者になると肝臓や腎臓の機能障害、併用薬が多いことが考えられるので、併用禁忌や併用注意などの安全性を考えるとこれからはベオーバに移っていくのかな?と思われます。
ベオーバは排尿圧に影響をおよばさずに膀胱容量を増大
ベオーバは選択的にβ3アドレナリン受容体を刺激する事で、排尿圧に影響をおよばさずに膀胱容量を増大する(※カニクイザル)とパンフレットには記載されています。
承認時の評価資料に記載のあったグラフでは、ベオーバをカニクイザルに静脈内投与後の膀胱機能に対する作用を※膀胱内圧測定法(シストメトリー)で検討しています。確かに排尿圧が横ばいである事に対して膀胱容量は右肩上がりなっています。
※カニクイザルは名前の通りカニを捕食しますが、雑食で植物の果実や魚など様々な物を食べるそうです。ヒトとの類似点が多いので、実験動物としてもよく用いられています。天王寺動物園にも確かカニクイザルはいたと思います。
※動物における排尿機能の測定法の一つで、膀胱内に生理食塩水や空気を注入しその注入量と膀胱内圧との関係を記録する。
コメント