男性は製薬会社の研究職に就くエリート
製薬会社社員の男が、自分の妻にメタノールを摂取させ殺害するという恐ろしいニュースを見ました。
二人はもともと製薬会社の同僚で結婚したそうですが、最近では家庭内別居の状態だったとの事です。
男性は製薬会社の研究職で新薬開発部門に就くほど優秀で、ともに国立大学の薬学部と農学部を卒業したエリート夫婦だったそうです。
私からすれば超エリートで誰もが羨むような理想的な夫婦に思えるのですが、やはり夫婦間の関係は当事者でないとわからないものなんでしょうね。
しかし縁あって夫婦になったのです当然夫婦喧嘩をする事もあるでしょうが、そんな時はお互いに出会った時の気持ちや結婚しようと思った時の気持ちを思い出してほしいです。
奥さんも薬学の知識がある事からメタノールを摂取すれば、視覚障害や最悪の場合死亡する事も分かっていた筈です。
何よりも小学生の息子さんがいたので、自殺に使用する事はまず考えられないとの見解です。
メタノールの毒性について
メタノールの毒性は個人差が大きいとされていますが、一般的にはヒトの致死量は30~100ml以上で、失明はたったの10ml以上と言われています。
お酒(エタノール)に混ぜられていても気が付く事はまずできないそうです‥
よって開封済みの酒瓶から注がれたお酒を飲む場合には十分な注意が必要です。
メタノールでもエタノールと同様に酩酊状態を生じます、そして代謝産物であるギ酸によって代謝性アシドーシスや失明等の毒性が現れます。
捜査関係者によると、Y子さんは1月14日、在宅勤務後に息子と2人で自宅で夕食を取った。翌15日朝には体調が悪くなり、ろれつが回らなくなるなどメタノール中毒に似た症状が出た。それ以降は食事をしていなかったとみられる。
メタノールは体内に摂取されると、30分から6時間で頭痛や酩酊(めいてい)などの症状が出ることが多い。このため、摂取したのは14日だった可能性が高いという。
Y田容疑者は14日午前7時半に出勤し、Y子さんらが夕食を終えた午後9時以降に帰宅していた。16日午前7時45分ごろ、「妻の意識がない」と119番し、容子さんの様子について「15日朝から体調が悪かった。自室で嘔吐(おうと)したり、ベッドから落ちたりした」などと説明した。
Y子さんは16日午前、搬送先の病院で死亡が確認された。口から致死量のメタノールを摂取したとみられ、死因は急性メタノール中毒だった。
時事ドットコムニュースより引用
Y子さんは1月14日の夕食時に摂取したと考えられており、15日には嘔吐したり異常行動があったそうです。
そして16日の午前中にお亡くなりになられました。
メタノールとギ酸は血液透析で効率よく除去できるので、15日に男性が気が付いた時すぐ病院に連絡していれば助かっていた可能性があります。
小さな子供さんを残して亡くなられた奥様はさぞかし無念だったかと思います、心よりご冥福をお祈りいたします。
メタノール中毒の対処法
メタノール中毒と診断された場合は、武田薬品のホメピゾール点滴静注(適応:エチレングリコール中毒、メタノール中毒)と、メタノールやギ酸の血液透析が治療の中心となる。
ホメピゾールは、肝臓でのアルコール脱水素酵素によるメタノールの代謝を阻害する事によりホルムアルデヒドやその後のギ酸の生成を抑制します。
葉酸であるフォリアミン(1㎎/㎏、最大50mg/回を4~6時間毎に投与)も、ギ酸を二酸化炭素と水に分解する補因子としての作用があり適応外処方であるが補助治療薬として使用されます。
メタノール摂取後に相当の時間が経過している場合は、すでにメタノールが代謝されギ酸の蓄積が進んでいるので分解を促進して無毒化する必要があります。
メタノールは劇物
日本でメタノールは、毒物及び劇物取締法の劇物です。
購入する時には毒劇物譲受書への署名捺印が必要であり、薬局などの販売者には書類の5年間保存が義務付けられています。
とはいえメタノールは比較的簡単に手に入るものでもあります。
こういったニュースを見ると酒類を提供する居酒屋やBARだけでなく、外で調理過程が不明瞭な飲食をする事自体が危険を伴う恐ろしい事だと考えるようになります。
果物や穀物を発酵させた蒸留酒(高分子多糖類であるペクチンの分解過程でメタノールが生成される)、密造酒等ではメタノールが含まれる事が多いので、海外旅行などで現地の住民から悪意なくお酒を進められた時にはアルコールアレルギーであると伝えてやんわりと断る方が無難です。
アルコールは、消毒用エタノールで手指消毒するだけにしておきたいものです。
参考:一般社団法人日本中毒学会:分析が有用な中毒起因物質の実用的分析法-その12-メタノール、一般社団法人 日本集中治療医学会メタノール中毒患者の血清メタノール濃度の実測値を測定し推定値と比較した一例
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