市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)で亡くなった高校生が服用した薬は?

薬の勉強
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このニュースを見た時に映っていたドラッグストアが、私のよく行く商店街にある店舗だったので非常に驚きました。

前途ある若者の命が失われる事が本当に悲しいです。

心からご冥福をお祈りいたします。

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市販薬の過剰摂取で死亡した女子高生が服用した薬は?

私が見たインターネットニュースによると、死因は急性薬物中毒で体内から致死濃度の2倍せき止め薬の成分が検出されたとの事。

いつも咳止めでオーバードーズのニュースを見ると、私の世代ではブロン液(現在はメチルエフェドリンがブロン液から除去されている)が連想されます。

その当時のブロン液は、錠剤に比べると多量に摂取しやすいので、オーバードーズされやすかったのかと思います。

※現在(2024/01/26)の新ブロン液エース(12歳以上)には、咳止めの成分としてジヒドロコデインリン酸塩が含まれています。

 

またエスエスブロン液L(8歳以上)には、デキストロメトルファン臭化水素酸塩が含まれています。

しかし、咳止め成分は市販の総合感冒薬等にも含まれているので、どの成分が危険なのかを保護者の方も理解しておく必要があります。

濫用等のおそれのある医薬品

市販薬のオーバードーズで使用される医薬品は「濫用等のおそれのある医薬品」であるかと考えられます。

これには6つの成分が指定されています。

  1. エフェドリン
  2. コデイン(鎮咳去痰薬に限る)
  3. ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)
  4. ブロムワレリル尿素
  5. プソイドエフェドリン
  6. メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち, 内用液剤に限る)

市販薬に含まれる咳止め成分

OTCの咳止めには、中枢性鎮咳薬、末梢性鎮咳成分としての気管支拡張薬、去痰成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分、他に生薬系などもがあります。

ここでは過剰摂取された咳止めの成分を、中枢性鎮咳成分:コデイン類、末梢性鎮咳成分としての気管支拡張薬:エフェドリン類の2種類として考えたいと思います。

どちらも多量に摂取することで精神状態に影響を及ぼします。

まず中枢性鎮咳成分:コデイン類ですが、これらは麻薬性と非麻薬性にわけられます。

麻薬性:ジヒドロコデインリン酸塩・コデインリン酸塩

麻薬性のコデイン類は、延髄の咳中枢に働き咳を抑えます。

薬によっては非麻薬性との比較試験で同等の作用があるとされていますが、一般的には強い咳止め効果を期待する場合には麻薬性のコデイン類があげられます。

これらはモルヒネと構造が似ているのでオピオイド受容体に様々な作用(鎮咳、鎮痛、鎮静作用等)がある為、相乗的に効果として感じられるのかもしれません。

モルヒネと同様に多幸感が感じられる事から濫用される一因となっています。

しかし、過剰摂取による呼吸抑制は死に直結します。

日本でも2019年からコデイン類は「12歳未満の小児」に禁忌となっています。

よってコデイン類が含まれる大人用の風邪薬や咳止めの量を、少ない量で子供に服用させる事がないようにOTC販売時に指導する必要があります。

医療現場で使用されるオピオイドの場合は、徐々に量が増やされるために耐性ができ副作用として現れ難いのですが、OTCのオーバードーズでは一気に服用する為に危険性が高くなります。

非麻薬性:デキストロメトルファン(メジコン)・チペピジン(アスベリン)・ジメモルファン(アストミン)等

非麻薬性の鎮咳効果は麻薬性と比べると劣るとされるものの、耐性や依存性も少なく便秘や呼吸抑制等の副作用が少ない事を考えると安全性の面で選ばれやすいです。

病院の処方でも選ばれる事が多いのではないでしょうか?

気管支拡張薬:メチルエフェドリン・エフェドリン

一般的には交感神経刺激薬であり、咳止めと言うよりは気管支拡張薬として使用されます。

しかし「濫用等のおそれのある医薬品」にも含まれており、痰のからむ咳では鎮咳去痰薬の構成成分としても使用されている事から、今回の様なオーバードーズに使用される医薬品としても考えられます。

生薬の麻黄にも含まれている成分であるエフェドリンは、覚せい剤の成分であるメタンフェタミンと構造が類似しています。

メタンフェタミンは医療用医薬品のヒロポンであり、ナルコレプシー等の精神刺激薬で使用される事がありますが一般的にはほとんど使用される薬剤ではありません。

しかしエフェドリン等の過剰摂取では、同様に覚醒作用が見られる事から、疲労を感じにくくなり、高揚感や万能感が得られると言われています。

その一方でエフェドリンには、交感神経刺激による血圧上昇作用や、グリコーゲン分解促進に伴う血糖上昇作用があります。

また、不整脈や場合によっては心停止を起こすおそれがあります。

ゲートウェイドラッグとしての危険性

市販薬であっても成分によっては、大麻やMDMA等と同様にゲートウェイドラッグとなります。

未成年でも気軽に手に入り服用ができてしまうので、しっかりと危険性を理解したうえで服用をしなければ今回の様な危険な事故が再び起こりえます。

昨今の若者による市販薬の過剰摂取に関しては、「ハイな気分になりたい」といった多幸感を求めるものよりも、現状の「辛い状況を忘れたい」「逃げ出したい」といった逃避型の理由が多いそうです。

こうした10代の若者たちは、両親や学校の先生に頼れないとなると、言葉巧みに言い寄ってくる悪い大人たちに簡単に利用されてしまいます。

安直にオーバードーズで亡くなったっても自業自得だとは考えず、こうした若者たちが未来に希望をもって前向きに進んでいける手助けや環境を周りの大人たちが整えて行く必要性を感じます。

おわり

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