THE LANCETの論文「アルコールの消費によるリスク閾値」より、アルコールが安全なのは週に100gまでと記載されていた事が今年よくニュースになっていたので詳しく論文を見てみました。
普段それほどお酒を飲む事がないのですが、自分の身の回りでお酒の好きな人が立て続けに病に倒れているのを目の当たりにしてきたのでちょっと心配になりました。
この論文についてはメディカルオンラインにも抜粋して背景や結論が書いていました。
全欧ビッグデータ解析が示す、「アルコールが安全なのは週100gまで」
【背景】
アルコール消費が低リスクでありうる閾値はどのレベルか。イギリスUniversity of CambridgeのWoodらは、19高所得国の心血管疾患罹患歴のない現飲酒者に関する83前向研究に参加した599,912名の個人データに基づき、飲酒量が全死亡・全心血管疾患・心血管疾患に与える影響を評価した。
【結論】
全死亡と飲酒量は非リニアにではあるが正に関連し、1週間当たり100g周辺ないし以下が最も死亡率が低かった。他方、飲酒量はラフにではあるがリニアに、脳卒中(1週間当たり100g増毎のHR1.14)・心筋梗塞以外の冠疾患(1.06)・心不全(1.09)・致命的高血圧性疾患(1.24)・致命的大動脈瘤(1.15)のリスクを高めた。一方、飲酒量はログリニアに心筋梗塞リスクを低下させた。1週間当たりの飲酒量100g以下の人と比較して、>100~≦200g・>200~≦350g・>350gの人は40歳時点での平均余命が各6ヶ月・1~2年・4~5年短かかった。
【評価】
重要だが論争的な主題に、全欧共同研究が現時点で信頼度最高レベルの結果を提示した。「安全なのはせいぜい週100gまで」という衝撃的な結果は、メディアにも多く取り上げられている。ここでも示唆されている、アルコールの心筋梗塞予防性や飲酒に至適量が存在するのかどうかという問題を確定するには大規模RCTしかないが、アメリカでの「適度の飲酒は健康に良い」という仮説に基づくRCTの企画は、企業スポンサー研究であるため批判に曝されている。メディカルオンラインより引用
論文の結論から全死亡と飲酒量はやはり関連していて、アルコールによる健康のリスクを最小化する飲酒量で最も信頼できる値は1日0杯(※ここでは1杯=アルコール換算で10g)なので全く飲まない事が一番だと思われますが、1週間に100g以下ならリスクはそれほど上昇しないように見受けられます。
そしてアルコールは癌、脳卒中、心筋梗塞以外の冠疾患、心不全、致命的高血圧性疾患、致命的大動脈瘤と多くの病気のリスクを高める一方で、飲酒量によっては心筋梗塞や糖尿病のリスクは低下させるみたいです。
こういった一面からもテレビで医師が「1日1杯のお酒は体に良い」と言って推奨していますが、アルコールの度数にも注意する必要がありますね。
※アルコール健康医学協会によるとアルコール量の計算式は下記になります。
計算式)お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8=アルコール量(g)
例)ビール中びん1本 250(ml)×[5(%)÷100]×0.8=10(g)
「1日1杯なら大丈夫!」とアルコール度数96度のスピリタスを毎日1杯飲むのはとても危険です、スピリタスだと100mlを1杯飲むだけで約1週間分になってしまいます。
私は若い頃に彼女に振られたショックで普段めったに行かないBARで「マスター!一番強いお酒をどんどん持ってきて」とスピリタスを何杯も飲んでふらふらになって友達に担がれて家に帰ったのを思い出します。次の日は二日酔いになって頭が痛かったです。
二日酔いといえば、服薬指導の時に「お酒を飲んだ時に薬を飲んでいいか?」とよく聞かれるのですが、アルコールの代謝にはある程度の時間がかかります。代謝能力によって多少は異なりますが、体重が60kgの人が1単位(ここでは20g)のお酒を飲んだ場合、アルコールが代謝されるまで約3~4時間はかかります。
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