患者さんから「クラリスロマイシンは慢性副鼻腔炎の薬って聞いているけど一体いつまで続ければいいの?」と質問がありました。
患者さんはさらに「耳鼻科で鼻の中を掃除してもらうのは気持ちいいけど、この薬は効いている実感がない。とりあえず先生が出しているから仕方なく続けているけど、毎回の薬局での負担金が重荷である。」等々の訴えがありました。
自分自身も慢性副鼻腔炎に対するクラリスロマイシンの少量長期投与療法について医師の指示通りに投薬を続けていましたが効果判定なども含めてしっかりと理解を深める必要があると思いました。
クラリスロマイシンとは?
クラリスロマイシン(CAM)14員環マクロライド系抗生物質製剤で、通常は何らかの感染症に使用される事が想定されます。
添付文書において一般感染症において適応菌種として、クラリスロマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属などに適応があります。
適応症は以下のとおりで副鼻腔炎も記載されています。
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●肛門周囲膿瘍
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●尿道炎
●子宮頸管炎
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
用法容量は通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)を2回に分けて経口投与とし、年齢、症状により適宜増減が可能となっています。(非結核性抗酸菌症、ヘリコバクター・ピロリ感染症の用法用量は除く)
マクロライド少量長期投与療法とは?
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併することが多いとされる、びまん性汎細気管支炎の治療において1980年代頃から14員環マクロライド系抗菌薬エリスロマイシン(EM)の有効性が明らかになっていました。
そして同じく14員環のマクロライド系抗菌薬クラリスロマイシン(CAM)やロキシスロマイシン(RXM)でも同様に慢性副鼻腔炎の経口薬物療法として使用されてきた歴史があります。
慢性副鼻腔炎へのマクロライド少量長期投与療法では、抗菌作用だけでなく炎症性サイトカイン(IL:インターロイキン)の産生抑制による抗炎症作用や、粘液糖たんぱくの産生抑制などを期待して治療が行われます。
投与する薬剤や期間については「慢性副鼻腔炎のマクロライド療法のガイドライン(試案)」で以下のように記載があります。
投与薬剤:14員環マクロライド系抗生物質(EM、CAM、RXM)
投与期間:3カ月の投与で全く無効な症例は速やかに他の治療法に変更する。有効症例でも投与期間は連続で3~6カ月で一度打ち切る.症状再燃に対して再投与は可。
効果不十分な病態:以下の病態に対しては効果に限界があることがわかつているので,手術等の適切な治療の追加あるいは治療法の変更が必要である。
1)1型アレルギー性炎症が主体である症例
2)中鼻道が高度に閉塞している症例
3)大きな鼻茸を有する症例
4)長期投与中の急性増悪
5)副作用:現在までに重篤な副作用の報告はないが,長期投与に際しては副作用発生に十分な注意を払う必要がある。特にテルフェナジン,アステミゾールなど一部の抗アレルギー却1との併用は重篤な副作用発生の危険があり避けなければならない。
つまりマクロライド療法の効果が期待できない病態としてあげられている、中鼻道が高度閉塞していたり、大きな鼻茸を有する症例、急性増悪(急性副鼻腔炎など)の場合は手術や治療法の変更が検討される必要があります。
有効症例でも投与期間は連続で3~6カ月で一度打ち切るということであるので、半年を過ぎても処方薬に変更がなく患者さんからの訴えがあれば一旦疑義紹介してみても良いかもしれません。
日本小児感染症学会における「見直そうマクロライドの使い方」でも下記のような記載がありました。
英国における副鼻腔炎および鼻ポリープのガイドライン28)においても,慢性副鼻腔炎に対するマクロライド少量長期療法はGrade Aの推奨がされている.
投与期間および効果判定時期に関しては,慢性副鼻腔炎に対しては 14 員環マクロライド系抗菌薬であるロキシスロマイシン(roxithromycin:RXM)を 6 カ月以上平均13カ月投与を行った症例について,臨床効果および薬剤投与中止時期の検討が行われている29).
抗菌薬投与後 10 週,6 カ月,投与中止時期の 3 時期において効果判定が行われているが,いずれも 60%前後と報告されている.これを踏まえ,ガイドライン上,3 カ月で効果判定し有効例でも 3~6 カ月の投与推奨がされている.
見直そう,マクロライドの使い方より引用(抜粋)
慢性副鼻腔炎に限らず、抗炎症作用を期待してマクロライド系抗菌薬を少量長期投与される場合は患者さんからの聞き取りをしっかりとする事。
漫然と投与されていないか?ガイドラインに沿った投与がされているか?これを注意しながら疑義紹介についてもできる限りやっていきたいと考えます。
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