筋骨隆々の患者さんから「血清クレアチニン(SCr)が高値だったのはクレアチンと関係ありますか?」と聞かれました。
血液検査の結果を見た先生から「腎機能の数値(SCr)がちょっと高いですね」と言われたそうです。
何でも運動前にクレアチンを摂取すると、持久力が高まって記録に良い影響を及ぼすので普段から摂取しているとの事でした。
CCr(クレアチニンクリアランス)やSCr(血清クレアチニン)の検査値は馴染みがあるのですが、恥ずかしながらクレアチンを運動前にサプリメントのように摂取することを私は知りませんでした。しかしトップアスリートだけでなく運動を多少なりとも嗜む人にとってはクレアチン摂取はプロテイン摂取の様に常識なんだそうです。
そこでクレアチンとクレアチニンの勉強をすることにしました。
なぜクレアチンを運動前に摂取する事で瞬発力が上がるのか?
体内のクレアチンの量を高めるために、クレアチンを摂取することをクレアチンローディングと言うようです。
カーボローディング(マラソンの前に大量の炭水化物を取り入れ、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄える方法)は聞いたことがありますがクレアチンローディングははじめて聞きました。
しかし数多くのトップアスリートたちが実際にクレアチンを摂取しています。一般的には1日20g程度のクレアチンを、約1週間続けて摂取する方法で行われているそうです。
クレアチンとは?
クレアチン (creatine) とは、有機酸の一種で生体内においてクレアチンリン酸に変換される事で、エネルギー源として筋肉に貯蔵されています。瞬発力を必要とするスポーツなどに有効といわれており、サプリメントとしても販売されています。クレアチンの代謝産物が腎機能の検査でも知られているクレアチニンです。
ではクレアチンは体内でどんな働きをしているのでしょうか?
筋肉を動かすためのエネルギーATP(アデノシン三リン酸)は加水分解してリン酸を遊離してエネルギーを放出します、そしてADP(アデノシン二リン酸)に変化します。
しかしATP(アデノシン三リン酸)が枯渇した後に更なる運動を続ける為には、ADP(アデノシン二リン酸)にリン酸を与えATP(アデノシン三リン酸)に戻す必要があります。
そこで運動前にクレアチンを摂取することでATP(アデノシン三リン酸)を再合成しエネルギーを再生産する事ができるのです。
通常クレアチンはタンパク質の代謝から生じたアミノ酸(アルギニン、グリシン、メチオニン)が肝臓や腎臓、膵臓で合成されて出来る物質です。そして筋細胞内に取り込まれエネルギー代謝に利用されると代謝されクレアチニンが老廃物として産生されます。
クレアチニンは腎尿細管で再吸収されることなく、ほとんどが尿中に排泄されるため、腎機能の指標として有用です。
腎機能が正常であればクレアチニンはそのまま排泄されるが、腎機能が落ちていれば血清クレアチニンが高値になります。血清クレアチニン(Cr:creatinine)の基準値は、男性で0.6~1.1(mg/dL)、女性で0.4~0.7(mg/dL)が正常値と言われている。
しかしこの患者さんの様に血液検査前にトレーニングなどで普段からクレアチンを摂取していると、クレアチニンの血清濃度が高まる傾向があるそうです。よって血液検査をする予定がわかっているときはクレアチンの摂取を控えたほうが無難かもしれません。案の定この患者さんはクレアチンの摂取を控えたところ次の検査で正常値に戻っていたそうです。