添付文書の腎機能障害患者の投与量表記eGFRとCcrについて

薬の勉強
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添付文書の腎機能障害の患者さんに対する投与量の表記記載がeGFRとCcrと、薬剤によって異なる場合があります。

自身の健康診断や血液検査の検査値を気にされている患者さんであれば、「ちょっと腎機能の数字が悪いみたいなんです…」と、SCrやCCrもしくはeGFRの値を教えてくれる事があります。

結果をそのまま見せてもらえる場合であれば、血清クレアチニン値(SCr)から、CCrもeGFRいずれの数値も導き出すことが可能です。

日本腎臓病薬物療法学会サイトより(eGFR 計算) Creat式、Cys-C式を参照

腎機能の評価方法の違いについては、熊本大学の平田純生先生のサイトに詳しく載っています。(平田純生先生は腎臓病薬物療法トレーニングブックの監修をされている方です。)

到達目標に合わせたケースでのトレーニングポイントがまとめられているので、テーマに沿って基本知識やガイドライン、治療法の学習ができます。おすすめの一冊です。

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患者さんからの聞き取りで検査値がわかった場合

以前聞き取りでeGFR値のみ教えてくださった患者さんがいました。

聞き取りしたeGFR値は、体表面積補正か体表面積未補正なのか不明でしたが、腎機能診断用の検査での値という事なので、体表面積補正eGFR(ml/mim/1.73㎡)であると考えられます。(※体格によってはかなりの差が出るので注意が必要となります。)

関数電卓がなかったので、補正された推算糸球体濾過量(eGFR)計算式のサイトで適当な血清クレアチニン値を入力してeGFRの値を調整しながらSCrの値を導き出しておよそのCcrに換算しました。

寝たきりの患者さんのようなフレイル傾向があればSCrとして0.6を代入するなど必要ですが、今回のような場合であれば逆算する事でおおよその値を導き出せました。

これで腎機能障害の患者さんに対する添付文書における投与量の表記記載がeGFRとCcrどちらであっても対応できます。

※日本腎臓病薬物療法学会の腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧では、「CCrで表示している添付文書における血清クレアチニン値測定法は多くがJaffe(ヤッフェ)法によるものであるため、CCr≒GFRと考えてよい」との事です。

常用量投与による副作用報告

腎機能低下患者(本来なら減量や慎重投与が必要な患者)への常用量投与による副作用報告として様々な事例が報告されています。

  • 抗ウイルス薬 バルトレックス(バラシクロビル)
  • 不整脈治療薬 シベノール(シベンゾリンコハク酸塩錠) / サンリズム(ピルシカイニド塩酸塩)
  • 活性型ビタミンD₃製剤 エディロール(エルデカルシトール)
  • 抗菌薬 クラビット(レボフロキサシン)

エディロールカプセルは骨粗鬆症の高齢患者に1日1回0.75μgで漫然と継続されていることが多く見られますが、血清カルシウム値(高カルシウム血症)などにより1日1回0.5μgに減量や中止の提案をするなど注意したいところです。(1日1回0.5μg投与による骨折予防効果は確立していない)

検査値の聞き取りなどが難しい場合は、高カルシウム血症で見られる症状(倦怠感、いらいら感、嘔気、口渇感、食欲減退、意識レベルの低下等)を意識して、患者や家族からの聞き取りで副作用の可能性を考えることも大切です。

薬剤師であれば腎排泄の薬をある程度把握している事とは思いますが、腎機能の聞き取りなどを疎かにしてしまうと思わぬ副作用が出てしまう可能性もあります。

今後はこまめに患者さんからの聞き取りを行って副作用の防止が出来るようにしたいと思います。

参考:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業

メトホルミンの添付文書が改訂

令和元年に入ってメトホルミンの添付文書が改訂され、eGFRによる投与量の目安が表記されるようになりました。

「重度の腎機能障害(eGFR<30ml/min/1.73㎡)のみ」が禁忌です。

上記以外の腎機能障害は今までの慎重投与から、eGFRの値に基づいた1日最高用量の目安が下記のように記載されています。

eGFR(ml/min/1.73m2 1日最高投与量の目安
60≦eGFR<90 2,250 mg
45≦eGFR<60 1,500 mg
30≦eGFR<45 750 mg
eGFR<30 禁忌

メトグルコ添付文書より

参考:薬事食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会:厚生労働省)

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