調剤薬局の事業承継に中小企業M&A実務必携を読みました

M&A

案件の紹介を受けてもM&Aについての知識が皆無なので「中小企業M&A実務必携」を読んでみました。個人の調剤薬局での譲渡について関係のありそうなところだけを備忘録としてまとめておきたいと思います。

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M&Aの手法について

主要なM&A手法の機能は「ぶらさげる」「切り出す」「くっつける」

①ぶらさげる 例)株式譲渡、株式交換など

②切り出す 例)事業譲渡、会社分割など

③くっつける 例)合併など

中小企業M&A実務必携より引用

個人がチェーン薬局等から事業承継する場合に多く用いられるのは、②切り出すの「事業譲渡」かと思われます。

事業譲渡について

特徴として法人格を持ったまま事業の譲渡ができ、切り出す内容も柔軟に決められるため、商品などの所有資産を譲渡する場合と同じようなイメージとの事です。

譲渡企業と譲受起業がお互いに話し合い同意したうえで、必要な資産・負債・契約関係のみを譲渡する事になります。

調剤薬局であれば、■■薬局〇〇店の経営権から始まり、卸との契約、薬の在庫、分包機やレセコン、不動産の賃貸契約、従業員との雇用関係など多岐に渡ります。

必要のない資産・負債や契約を排除できるためリスクを排除できる手法であるが、保健所や厚生局等への許認可の届け出や各契約(雇用契約や賃貸借契約等)を再度行う必要があります。

引き継ぐべき資産や負債は時価で受け入れるため、対価との差額が税務上(正や負ののれん)計上されます。

事業譲渡の手続き

事業譲渡は契約が締結されてからも様々な手続き(許認可、融資、打ち合わせ等)がある為、実際にその効力が発生するまでに相当な期間と幅(目安として2か月~6か月程度)があります。

会社法で必要とされる、事業譲渡へ反対する株主の株式買取請求権への対応(効力発生日の20日前から効力発生日の前日までに買い取り請求手続きを行う)は、総資産の1/5を超えない場合は重要な一部の譲渡に該当しないとされるので反対株主の株式買い取り請求権は生じません。

チェーン薬局の切り離し案件等の場合であれば、個人への譲渡は1店舗だけである事が多いかと思われるので、譲渡企業の総資産1/5を超える事はあまりないかと考えられます。

従業員の雇用関係はどうなるのか?

個人で譲受する1店舗薬局で、管理薬剤師が一人でやっている場合は薬剤師の引継ぎはまずないかと思われます。

しかし譲渡される薬局や患者さんについて、よく理解しているであろうベテラン事務員さんの引継ぎは検討される方がいらっしゃるかと思います。

事業譲渡では、雇用関係についても個別に承継する事になります。従業員は譲渡企業をいったん退社して改めて雇用関係を結びなおすことになります。

しかし実務上では「転籍承諾書」なる書面にて雇用関係を引き継ぐ事が一般的なようです。

赤字の薬局の承継であれば高すぎる人件費を削減するためにも給与交渉が必要な場合もあるかもしれません、しかし引継ぎを円滑に進めるためにも難しい決断を迫られる所です。

各種税金について(消費税・印紙税等)

消費税

事業譲渡では、資産の移動について課税対象となるものには消費税がかかります。

営業権(のれん)などは形がないものなので、お店で商品を購入した場合に消費税を支払うといった感覚からは違和感がありますが、無形固定資産として消費税の課税対象となります。

消費税も10%になったこともあり、事業譲渡における消費税は想像以上に大きな金額になります。さらに調剤薬局では共通対応課税仕入としていても課税売上の割合が低いので、仕入税額控除で取り返すこともなかなか難しいです。

消費税の課税対象資産(例)

  • 棚卸資産(商品、原材料など)
  • 前払費用(課税仕入れとして取り扱うもの)
  • 有形固定資産(建物、器具備品、機械装置など)
  • 無形固定資産(営業権、商標権など)

消費税の非課税対象資産(例)

  • 土地
  • 金銭債権(預金、売掛金など)
  • 有価証券(株式、手形、小切手など)
  • 敷金・保証金(建物賃借に伴う保証金、営業上の差入保証金など)

印紙税

国税庁のサイトによると、第1号文書にあたる事業譲渡契約書に必要な印紙税は薬局の譲渡金額に応じて課税されるとあります。(※独占交渉権を得るために締結する基本合意書においても印紙税の対象となる可能性があります)

例えば調剤薬局のM&Aにおいて、個人が承継する案件の譲渡金額の平均値である(1千万円を超え5千万円以下)の場合は印紙税額が2万円となります。(印紙税額の一覧表

登録免許税・不動産取得税

また事業譲渡において薬局の建物や土地などの不動産の買取がある場合は登録免許税(固定資産課税台帳価格の2%:登録免許税の税額表)や、不動産取得税(平成20年4月1日から令和3年3月31日まで土地・住宅は3%、住宅以外は4%)が必要となります。

事業譲渡の概要部分だけですが、事業承継の初心者でもかなり分かりやすく書かれていましたので、同じく株式会社きんざいの「中小企業M&A実務必携 法務編・実務編」についても読んでみたいと思います。

 

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