「マキロンみたいな消毒液ちょうだい」と言われた時に何を薦めるか?

薬の勉強
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タイトル通りなのですが「マキロンみたいな消毒液ちょうだい」と言われた時に何を薦めるかですが、我々の世代から上の世代の方でこの様に言われるお客さんが多いです。

消毒薬は、対象となる微生物や消毒対象物によって高水準・中水準・低水準の三つの区分に分けられます。

マキロンを購入希望される方の多くは、おそらく急性創傷(開放創)の消毒に使用する事が想定されますので、皮膚や粘膜にも使用可能な、中水準・低水準の消毒薬から選択する事になります。

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湿潤療法とは?

近年は、消毒液を使用する事で治癒に有益な線維芽細胞や白血球、マクロファージにも有害であると考えられ、汚れた傷口を生理食塩水や水道水などで綺麗に洗い流してから、ハイドロコロイド材などの創傷被覆材で傷の乾燥を防ぐ※湿潤療法が主流となっています。

よって、基本的に創傷部に感染兆候がなければ洗浄は必要ですが、消毒は不要とされています。

※傷口に土や砂、木片などの異物が残っていると化膿する原因となります、しっかりと生理食塩水や流水(残留塩素濃度の保持された水道水)で取り除きましょう。

ただし海外で傷口を迂闊に水道水で洗う事は避けなければなりません。

これは日本の水道水が飲料水としても使用可能な程に清潔な水だからであり、世界中で水道水をそのまま飲用できる国は、数える程しかありません。

特に発展途上国などの旅行中で生理食塩水や清潔な水がすぐに手に入らない時や、水道水の安全性に不安な場合は、低水準の消毒薬で傷口を消毒する方がよいでしょう。

マキロンの出番は、失われてはいません。

指定医薬部外品 マキロンとは?

マキロンは※指定医薬部外品で、すりキズ、きりキズにシュッとかけるタイプの殺菌消毒液です。

規制緩和によって薬局や薬店以外(コンビニやスーパー)でも販売できる

マキロンみたいな消毒液という事なので、マキロンに限定しているわけではなく、似たような形状のプシュっとする形のものであれば特に成分を気にする事なく購入されます 。

ちなみにマキロンの成分はベンゼトニウム塩化物(100mL中50mg)です。

名前の由来

誕生した1971年当時は、家庭のキズ薬として広く使用されていたのが“赤チン”でした。
その“赤チン”に似たはたらきのあるキズ薬であることが連想できるように、正式名称であるクロム液」から、マキロンの「マキロ」を引用しています。
語尾に「ン」をつけたのは、親しみを感じてもらうため、製品名のひびきをリズミカルにするためです。
なお、当時キズ薬のイメージとして定着していた同製品をなぞったネーミングですが、マーキュロクロム液の成分は含まれておりません
現在発売されている「マキロンs」の「s」には、安全性(Safety)、長年にわたるシリーズ(Series)などの意味がこめられています。

第3類医薬品には、マキロンsもある

同じくベンゼトニウム塩化物(100mL中100mgが入っています。

他には皮膚の組織修復を助けるアラントイン、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩が入っています。

またモンシーs等のマキロンs風の商品は、消毒薬としての成分はベンゼトニウム塩化物なので、区分としては低水準の第四級アンモニウム塩であり、一般細菌に対して効果が見込めます。

他のマキロン風の商品には、クロルヘキシジングルコン酸塩液が主成分のマッキンαという商品もありますが、こちらも区分としては低水準の第四級アンモニウム塩であり、一般細菌に対して効果が見込め基本的にはマキロンとほぼ同様の使い方ができますが粘膜に使用する事ができません。

モンシーは別物ですが、マッキンはマキロンと似たネーミングですね…

これらを考慮して創傷面の消毒が必要と判断された場合は、できるだけ組織障害性の低いベンザルコニウムや、ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどを選択する。

イソジン®きず薬の区分は?

それでは、うがい薬でも有名ブランドである、イソジンの区分は?

イソジンの主成分はポビドンヨード(PVPI)ヨウ素強い酸化作用を利用した殺菌消毒成分です。

1ml中、ポビドンヨード100mg(有効ヨウ素として10mg)

区分は中水準であり、マキロンよりも幅広い菌(一般細菌、真菌、MRSA、緑膿菌、結核菌など)やウイルスに効果があります。

一見、幅広い菌やウイルスに効果があるので感染予防に良さそうですが、PVPIによる開放創の消毒により治癒に有益な線維芽細胞や白血球、マクロファージにも有害であり治癒を遅らせたりと、感染症のリスクを高める可能性も考えられます。

ガイドラインでは、以下の様に記載があります。

(1)ポビドンヨード:10%濃度のイソジンⓇが代表的である.
褐色であり,この色がつくため消毒範囲がわかりやすい.この殺菌作用は,ヨウ素の酸化力によるとされる.イソジンⓇ添付文書によると塗布後30秒程度でほとんどの細菌は死滅するとされている.

汗や滲出液による湿潤環境下で,しばしば接触皮膚炎や化学熱傷を生じることがあるので,消毒後はよく洗浄することが必要である.

高濃度で組織に残留すると,刺激症状ばかりか,局所の血流障害を生じうるとの報告があるため,組織に残留しないように十分洗い流すことが重要である.

顔面や粘膜には刺激が強いため,希釈して用いる.また,甲状腺機能に異常のある患者では,甲状腺ホルモン関連物質に影響を与えるおそれがあり注意が必要である.

引用:創傷一般ガイドライン

ポビドンヨードは刺激性が強く、ヨウ素に対し過敏症のある人(ヨードアレルギー)の方や、金属などの器具には使用ができません。

ガイドラインの消毒薬の選択一覧では、皮膚創傷の深さと状態が深い慢性皮膚創傷(感染/壊死組織を伴う場合)でイソジンゲル等のヨード系の消毒薬が選択肢にあがっている。

おわり

参考:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)-1 創傷一般(第 3 版)日本皮膚科学会

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