耳鳴りの症状で耳鼻咽喉科を受診した患者さんにSSRIのジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)が処方さていた患者さんから電話で問い合わせがありました。
服用後に吐き気症状により気分が悪くなり自らインターネットで薬について調べたところ「うつ・パニック障害」の薬と書かれてあり、吐き気がSSRIによって起こりやすい副作用である事は説明があったが、薬を飲むのが怖くなったとの事でした。
耳鳴りの診療ガイドラインでは、薬物療法単独での治療効果は低いことから耳鳴りの発生機序などをしっかりと患者さんに伝える「教育的カウンセリング」が重要だと言われています。
ストレスによってセロトニンが減少すると、うつ・不安症状に伴い平衡機能の増悪によるめまい症状や耳鳴りといった症状が出る事があります。耳鳴はうつや不安・不眠といった症状と併存することが多いと言われています。
よって心因性めまいや耳鳴りの不快感を改善する目的で抗うつ薬のSSRIが投与されることがある旨を伝えました。
また再度SSRIの飲み始めには吐き気が出現しやすく飲み続ける事で慣れてくる事が多い事、そしてもしも不安であれば吐き気止めを処方して貰うことを提案しました。
ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)
名称の由来
ジェイゾロフト:J ZO LOFT
「J」は、Japanの頭文字「J」
「ZO」は、ラテン語で「心・気分」
「LOFT」は、「持ち上げる」
効能又は効果
- うつ病・うつ状態
- パニック障害
- 外傷後ストレス障害
薬理作用
SSRIの一種であるジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)は、脳内セロトニンの再取り込みを選択的に阻害する事で、シナプス間隙のセロトニンを増加させる。
耳鳴の治療における抗うつ薬
耳鼻咽喉科でみられる抗うつ薬や睡眠薬の処方に関しては、耳鳴を改善するという報告もみられるが、エビデンスが十分でなく副作用を考えた場合に推奨されないといった報告もみられます。
耳鳴の薬物治療は、(1)内耳機能の改善を期待する薬剤と(2)耳鳴または耳鳴苦痛度を軽減する薬剤の2 種類に分けられる。
(1)について、感音難聴を改善するエビデンスのある薬物療法はこれまで確立されておらず、また、近年明らかにされてきた耳鳴の中枢起源説から理論的にも耳鳴治療として十分な効果は期待しがたい。
(2)について、有効性を示唆する文献はみられるが、あきらかなエビデンスを有する薬剤は認められなかった。
これを踏まえて、諸外国(米国、ドイツ、デンマーク、オランダ、スウェーデン)のガイドラインでは薬物療法については行わないことを推奨している。
ただし、耳鳴増悪の一因となっている問題として抑うつや不眠の併存があるのであれば、それに対して抗うつ薬や眠剤を用いることは推奨(ドイツ、スウェーデン)している。
耳鳴診療ガイドライン2019 の発刊に向けてより引用
参考:ジェイゾロフトインタビューフォーム・耳鳴診療ガイドライン2019
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