【ニュース】メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)が認知症治療に?

メリスロン構造式 ニュース
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調剤薬局では馴染みのある薬メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)が、通常の3~6倍の用量の投与で認知症の治療に役立つかもしれないというニュースを見ました。

メリスロンは通常メニエール病、メニエール症候群、眩暈症で使用されるめまいの薬という認識ですが、これが本当ならば薬価の非常に安い薬ですし認知症の患者さんにとっては希望のもてる話ですね。

新しい薬として出される可能性が高そうですが早く実用化されることが期待されます。

通常メリスロン6mg錠の場合、成人は1回1~2錠(ベタヒスチンメシル酸塩として1回6 ~12mg)を1日3回食後経口投与です。

この米科学誌電子版における実験での投与量は3~6倍の用量との事なので1回18mg~72mgとメニエールでの用量と比べると結構な用量であることが伺え知れます。

メリスロンは一般名のベタヒスチンメシル酸塩という名前からもわかるように、ヒスタミン類似作用を有します。

よって慎重投与の患者として以下の(1)~(3)の患者には注意が必要となっています。

※実験における可能性の段階ですので安易に増量して服用する事がないようにしてください。

⑴ 消化性潰瘍の既往歴のある患者及び活動性の消化性潰瘍のある患者〔 本剤はヒスタミン類似作用を有するため、H2受容体を介して胃酸分泌亢進を引きおこすおそれがある。〕

⑵気管支喘息の患者〔 本剤はヒスタミン類似作用を有するため、H1受容体を介して気道の収縮を引きおこすおそれがある。〕

⑶※褐色細胞腫のある患者〔 本剤はヒスタミン類似作用を有するため、アドレナリンの過剰分泌により血圧上昇を引きおこすおそれがある。〕

※褐色細胞腫は副腎クロム親和性細胞由来の腫瘍。主な症状は高血圧、その他にも動悸、発汗、立ちくらみ、頭痛等を引き起こすカテコールアミンが過剰産生される病気。

画像のようにメリスロンの構造式はヒスタミンに良く似ています。消化性潰瘍患者やぜんそく患者ではメリスロンを服用する場合に注意する必要があります。

メリスロン構造式

メリスロンの開発経緯は、めまいに対するヒスタミンの投与が血管性頭痛に有効であった経験から始まったと言われています。

しかし、ヒスタミンは腸内のヒスタミナーゼにより分解されるため、内服では全く無効だったので注射で投与する必要がありました。

その後、2-アミン類がヒスタミン類似作用を示すことが報告されると、その化合物のうちピリジン化合物(一般名:ベタヒスチン)に着目して、内服でも分解されないベタヒスチン塩酸塩のメニエール病に対する有効性が確認されたそうです。

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メリスロンの作用機序は?

作用部位は内耳の毛細管前括約筋、脳血管です。

作用機序はヒスタミン類似作用による末梢血管拡張作用です。

微小循環系、特に内耳の毛細血管前括約筋を弛緩し、内耳血管系の血流を増加するほか、内耳毛細血管の透過性を調整することにより、内リンパ水腫を除去します。

また、内頸動脈の血流量を増加し、脳循環をも改善して、めまい、めまい感を消退させると言われています。

ニュースからは「ヒスタミンの放出を促進させる働きがある」との事なので、メリスロン自体のヒスタミン類似作用だけでなく、これまでの作用機序とは異なる薬理作用が注目されている様です。

ヒスタミン自体は体内でもヒスチジン脱炭酸酵素によりヒスチジンからヒスタミンへ合成され、生体内で肥満細胞など様々な場所に存在しています。

今回注目されている薬理作用はヒスタミンの放出促進作用ですが、中枢神経系において神経伝達物質に働く特異的な受容体などに対して作用する可能性も考えられます。

ニュースの元となっている米科学誌電子版の論文を見ていないので、また詳しく見てみたいと思います。

忘れてしまった記憶を薬で回復させる実験に成功したと、東京大や北海道大などの研究チームが発表した。記憶を回復させる効果がある薬の発見は世界初という。アルツハイマー病などの認知症の治療に役立つ可能性がある。米科学誌電子版に8日、論文が掲載された。

 チームは20代を中心とした健康な男女計38人に100枚程度の写真を見せ、約1週間後に覚えているかを調べる実験を実施。目まいの治療薬として使われている「メリスロン」を飲んだ場合と、飲まなかった場合で正解率を比較した。

その結果、薬を飲むと、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率は最大で2倍近く上昇することが判明。忘れた写真が多かった人ほど効果があり、見たかどうか判別が難しい写真で正解率がより高まる傾向があることも分かった。

この薬は脳内の情報伝達に関わる「ヒスタミン」という物質の放出を促進する働きがある。この効果で記憶を担う神経細胞が活性化し、忘れた記憶の回復につながったとみている。

記憶が回復する仕組みを詳しく解明し、認知症の研究成果と組み合わせることで、アルツハイマー病などの新たな治療法につながる可能性がある。チームの池谷裕二東大教授(薬理学)は「記憶回復のメカニズムが分かったので、今後はより効果の高い薬の開発につなげたい。認知症患者らの生活の質を高められる可能性がある」と話している。

SankeiBizより引用

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