調剤薬局で初めて働く人へ(ヒヤリハットとリスクマネジメント)

調剤事故・ヒヤリハット
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調剤事故と調剤過誤

調剤事故は薬剤師の過失の有無を問わず患者に健康被害が発生した場合を指します。

一方、調剤過誤は薬剤師の過失により患者に健康被害が発生した場合を指します。

薬剤師として初めて調剤薬局で働く時に第一に心がける事は、自分自身が医療の担い手である事を意識する事だと思います。

棚から薬を集めて渡すだけの仕事だと思って調剤業務に就くのではなく、人の生命に影響を及ぼす行為であり、法的な責任の伴う仕事である事を自覚しましょう。

初めてする業務や職場でインシデントの報告が多くあがっています。処方箋でもいつもの門前の処方箋でない場合、ヘルプや転職で働き始めたばかりの店舗などでも注意が必要です。

勤めはじめと少し慣れてきた頃が一番ミスを犯しやすいと言われますが、実際1年目から3年目までの薬剤師が事故を起こしやすいそうです。

ミスを起こさないためにも、ピッキングや調剤の後に改めて監査をしましょう。患者さんが急いでいるからとせかされた時などは特に注意をしたほうがいいでしょう。

とはいえどんな優秀な薬剤師でも人間である限りミスは必ず起こすものです。(インシデント事例/ヒヤリハット事例)

出来る限り2重、3重のチェックをしてから患者さんにお渡しするようにしましょう。

ミスを起こさないために行うべき確認事項

  1. 処方箋内容の確認 処方量が添付文書の容量用法を逸脱していないか確認
    (小児の場合は年齢、体重も確認する事)
  2. 薬歴を確認 副作用歴、アレルギー歴を確認、前回の処方日からの日数確認
  3. 調剤業務 商品名、規格、数量を間違いないようにピッキング
  4. 監査業務 薬剤を先に確認してから、処方箋を確認する事で思い込みを防げます
  5. 投薬業務 患者さんにお薬を見せながら服薬指導をする事で渡し間違いを防ぐ事ができます

規格違いは死亡事故を招く

散剤やシロップでは規格間違いに十分注意しましょう。

特に散剤では

  • 「主薬量」力価表示
  • 「製剤量」重量表示

と医師による記載方法が異なる場合があります。

10倍、100倍を間違えると死亡事故につながります。

2017年9月にも京都大学で60代の女性患者が処方箋記載の用量よりも738倍の高濃度に調剤されたセレンによりセレン中毒により死亡する事故がありました。

調剤の手順書はミリグラム単位でしたが、使った天秤はグラム単位の表記で1000倍の違いがあり量り間違いが生じた可能性が指摘されました。

※セレンは原子番号34番の必須元素でセレンが欠乏するとクーシャン病やカシンベック病の原因となります。日本人の平均的なセレンの摂取量は100µg/日とされ、中毒を起こす摂取量は800µg以上とされている。

京都大医学部付属病院に薬剤師として勤めていた男女2人大阪府茨木市の大学院生の男性と札幌市北区の無職女性は業務上過失致死容疑で書類送検されました。

充填ミスは死亡事故を招く

散剤は薬局で使用している空の瓶に充填する時や、自動錠剤分包機にカセットを充填するときも注意しましょう。

必ず複数の確認を経て充填することを忘れないようにしましょう。

2011年3月に埼玉県越谷市で自動錠剤分包機のカセット充填を誤り、医師から処方のあった胃酸中和剤ではなく、コリンエステラーゼ阻害薬のウブレチドを調剤。

後日、薬剤師の報告により管理薬剤師は調剤ミスに気づいたが、患者に対して回収の手配や服用中止指示をすることなく患者は中毒死する事故がありました。

ウブレチドとは?

ウブレチドはコリンエステラーゼ阻害薬の一種で、排尿筋の緊張を高め、手術後、神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難を改善する薬剤です。

通常は成人1日5mgであれば排尿困難での処方が多いと思われます、逆に5mg以上の処方であれば重症筋無力症の可能性があります。

1.手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難
ジスチグミン臭化物として、成人1日5mgを経口投与する。2.重症筋無力症
ジスチグミン臭化物として、通常成人1日5~20mgを1~4回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。

投与によりアセチルコリン過剰を来たすと、重篤な副作用である「コリン作動性クリーゼ」が発現する場合があります。

下記のような症状が認められた場合には、直ちに投与中止して医師への連絡が必要です。拮抗薬としては抗コリン薬のアトロピンが使用されます。

■コリン作動性クリーゼの徴候■
初期症状

悪心嘔吐、腹痛、下痢、唾液分泌過多、気道分泌過多、発汗、徐脈、縮瞳、呼吸困難等
臨床検査
血清コリンエステラーゼ低下

ウブレチドは毒薬であり法律により「毒薬及び劇薬は他のもの(他の毒薬or劇薬以外医薬品)と区別して陳列、貯蔵しなければならない」とされています。

さらに毒薬は施錠義務があるので、通常であれば装填間違いをする事は考えられないのですが、確認を怠るとありえないようなミスが起こります。

薬剤師として調剤業務に携わっていると自分自身がいつ加害者になるかわかりません、1回1回の調剤に危機感を持って業務に打ち込むようにしましょう。

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