心房粗動(AFL)と言われたけれど心房細動(AF)と何が違うの?

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患者さんより「心電図検査で循環器内科の先生に不整脈の心房粗動(AFL:atrial flutter)と言われたけれど心房細動(AF:atrial fibrillation)と何が違うんですか?」と聞かれました。

心房細動は最も有名な不整脈の一つであり患者さんの口からも名前を聞くことがとても多いかと思います。しかし同じ不整脈でも心房粗動との違いについて知らなかったので不整脈薬物治療ガイドラインで調べてみました。

第5章に心房細動、第6章に心房頻拍・心房粗動が記載されています。

解剖学的リエントリーの代表例は,ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群の副伝導路と刺激伝導系を介する発作性上室頻拍や,心筋梗塞瘢痕や房室弁輪の周囲を旋回する心室頻拍や心房粗動である.

心房細動では発作の停止や再発予防にI 群薬が用いられることが多いが,さまざまな催不整脈作用が発生することがある.IC 群薬を用いると,不応期が延長して興奮波長が長くなるとともに伝導遅延が増強して心房粗動に移行することがある.

心房粗動は,心房拍数240 ~ 440 拍/ 分の規則的波形を有するマクロリエントリー性頻拍である.心電図上は,心房拍数240 ~ 340 拍/ 分の長い頻拍周期(I 型)と心房拍数340 ~ 440 拍/ 分の短い頻拍周期(II 型)に区分され654),I 型心房粗動の多くは下大静脈- 三尖弁輪間解剖学的峡部(CTI)を含むリエントリー回路であり,峡部依存性心房粗動(CTI-dependent atrial flutter)とよばれる655).

また,峡部依存性心房粗動が三尖弁輪を反時計方向(心房中隔を上方に,右房自由壁を下方に)に興奮回旋する場合を「通常型」,三尖弁輪を時計方向に興奮回旋する場合を「非通常型」心房粗動とよぶ656).

通常型では下壁誘導(II,III,aVF 誘導)が鋸歯状波,V1 誘導が陽性粗動波を,非通常型では下壁誘導が陽性粗動波,V1 誘導が陰性粗動波を示す.

一般的に,心房粗動と心房細動の合併は22 ~82% の高率にみられ657–660),心房細動に対するI 群抗不整脈薬投与後(IA/IC flutter)にも認める661).

一方,峡部非依存性心房粗動は,僧帽弁輪,左房天蓋部ならびに心房筋瘢痕周囲のリエントリー性頻拍があり662, 663),しばしば複数のリエントリー回路が併存する664).

基礎心疾患や開心術の既往歴を有する例に認めることが多いが,特発性も存在する.一般的に,その興奮回旋路の大きさにより,マクロリエントリー(直径が2 ~ 3 cm 以上)とマイクロリエントリー(直径が2 cm 以下)とに分類される665).

2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドラインより引用

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電気刺激と心電図波形

心房細動と心房粗動の病態は似ているので心電図波形によって見分けることが出来ます。

心房細動は電気刺激が洞房結節以外の場所でも発生する為に、電気刺激のバランスがとれず無秩序な状態となり心房が正常な収縮ができず血液を寝室に送り出すことが出来ません。不規則な刺激は心室の拍動にも影響し拍出量が低下します。

心房粗動は、心房での電気刺激のバランスは保たれているのですが、早いスピードで心室に刺激が伝わり拍動回数も非常に速くなります。心房粗動は電気的刺激が規則正しく旋回しているので心電図の特徴としてR波の間隔が均等でのこぎりの歯・鋸歯状波(きょしじょうは)のように見える粗動波が見られます。

どちらの不整脈も電気刺激の異常により心房が急速に収縮する事で心室の収縮も速く非効率な状態になっていますが、心房細動は電気刺激が複数個所で起きている事から不規則に、心房粗動は規則的だが非常に速い拍動をすると言われています。

心房細動(AF)脈速く不規則

心房粗動(AFL)脈速く規則的又不規則

原因や症状と治療方法

不整脈の原因となる事がある高血圧や心臓弁膜症、甲状腺機能亢進症等の病気によって、AFやAFLが起こりやすくなる場合もあります。

またAFLがみられる人の多くは、AFも起きることがあります。これらの不整脈により血栓症や心拍出量の低下による血圧低下や心不全に注意が必要です。

症状は動悸や脱力感、めまい、ふらつき、息切れ、胸痛等です。心室の拍動が120回/分未満であれば症状として出にくいですが、それよりも速くなると、動悸や胸痛を感じる事があります。

治療方法は心拍数を低下させる薬や抗凝固薬を投与したり、カルディオバージョン(電気的除細動)によって正常な心拍リズムを回復する方法、カテーテルアブレーションと呼ばれるに高周波電流で異常箇所を焼く手術等があります。

AFやAFLに対する薬物治療で心室の拍動を遅くすると、心臓が全身に血液を送り出す効率を高めることが出来ます。

  • 薬物治療(血栓予防と心拍コントロール)
  • カルディオバージョン(電気的除細動)
  • カテーテルアブレーション

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