眼科医の先生から緑内障の疑義紹介について言われた事

緑内障 役に立つ話
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門前の眼科医の先生から「薬局の薬剤師さんて、手術して点眼薬できちんと眼圧コントロール出来てる患者さんでも、毎回緑内障に禁忌の薬がでてたら全部疑義紹介してくるんだけどなんでだろう?」と聞かれました。

緑内障の患者さんの処方薬に、抗コリン作用薬(過活動膀胱治療薬、BZ系の睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬、総合感冒薬)等で添付文書に禁忌が記載されている場合、わざわざ診察中の忙しいDrに疑義照会をすべきか悩みどころかと思われます。

薬剤師であれば、開放隅角緑内障は疑義紹介しないけど、閉塞隅角緑内障は疑義紹介した方が良い、といった漠然とした判断基準は持ち合わせている方は多いかと思います。

もちろん基本的には「緑内障禁忌」とあれば疑義紹介をするべきなのですが、杓子定規に何でもかんでも毎回やっていると、診療中の先生と長々と待たされる患者さんに迷惑なだけかとも思われます。

よって添付文書に記載されている緑内障の種類や、患者さんの受診歴、検査歴、手術歴などから、最低限の疑義紹介で済ませる事が出来るように理解を深めたいと思います。

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緑内障とは?

緑内障

緑内障(青そこひ)は英語でグラコーマglaucomaと言います。「ギリシャ語の青色を表すグラウコス glaukos+腫瘍を表す接尾語のoma」から来ているそうです。

顆粒性結膜炎のトラコーマ「クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)を病原体とする感染症」も眼科の病気なので、コーマは目の関係の言葉かと思ったのですが関係なかったみたいです。

緑内障診療ガイドラインでは、緑内障の定義として以下の記載がありました。

「緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」

私は緑内障について眼圧の高い状態で視神経が障害される病態だと理解していました。(正常な眼圧は10~20 mmHg程度だと言われています)

しかしこの基準から外れた場合を「緑内障」と理解していると「正常眼圧緑内障」を見逃してしまいます。また「高眼圧症」であったとしても、異常が無ければ眼圧の高さはそれほど気にされない先生もいます。

緑内障の種類

原発:発病原因がその場所による

①開放隅角緑内障(隅角の閉塞なし、緑内障の約78%)
線維柱帯の房水流出障害が原因となる事が多い。

隅角は広く開放しているので抗コリン薬などにより散瞳しても眼圧が上昇する事はなく、多くの場合緑内障禁忌の薬を使用しても問題はない。

ただし慢性的に進行していくため、進行とともに視野狭窄や視力障害をきたすため、適切な治療をしないと失明の危険性がある。

②狭隅角・閉塞隅角緑内障(隅角が狭い・閉塞、緑内障の約12%)

構造的に前房が浅く、隅角が狭いので、ストレスや抗コリン薬などによる散瞳で隅角が閉塞しやすくなっている。

眼圧は40~60mmHg以上(通常は10~20mmHg)となり、眼圧が高い状態が数日続くと失明状態になる。

狭隅角 閉塞隅角

出典:日本眼科学会

続発:病気や薬が原因

ほかの病気(糖尿病、ぶどう膜炎、外傷など)や薬(ステロイドなど)の影響で眼圧が上昇

抗コリン薬が緑内障に禁忌な理由は?

眼圧が上昇するには隅角が狭い線維柱帯の目詰まりなど様々な原因があります。

アトロピンなどの抗コリン作用薬は(散瞳=虹彩が縮む事で厚くなる)隅角を狭くします。すると房水通路が狭くなり眼房水がシュレム管より排泄されにくくなり眼圧が上昇し、緑内障を悪化させる恐れがあるため禁忌とされています。

よって手術をしていない患者で、狭隅角や閉塞隅角で急性発作を起こす素因(狭隅角眼、浅前房等)を持つ患者では、抗コリン薬に注意をする必要があります。

眼圧が上昇した状態が長時間続き視神経が傷つくと失明の危険性もあります。一度障害された視神経や視野の狭窄はほとんど回復する見込みがないので、早期に発見治療する事がとても重要です。

患者さんに確認する事項としては、緑内障の種類だけでなく隅角検査眼の手術歴といった事にも注意します。

一方、隅角が狭くない開放隅角緑内障では、眼房水の排泄路(線維柱帯)の目詰まりで眼圧が上昇すると言われています。開放隅角でも線維柱帯に目詰まりがあれば手術する必要があります。

白内障手術をすると開放隅角になる?

白内障の手術を受けた場合、水晶体(約4~5mm)を粉砕して眼内レンズ(約0.3mm)に置き換わる事で隅角が広くなります。

眼内レンズは水晶体に比べると厚みがとても薄く手術後は隅角が開放される事で、多くの場合「急性緑内障発作」を発症しにくくなると言われています。

参考:近畿中央病院「緑内障なのに白内障手術??」

添付文書に禁忌記載のある緑内障の種類

禁忌

添付文書の禁忌欄には、緑内障の記載方法にもいくつかの種類があります。

緑内障の患者

全ての緑内障なので基本的には全て疑義紹介する必要がありますが、手術済みで点眼治療で眼圧のコントロールが出来ていれば初回の確認のみで以後は経過観察。

閉塞隅角

閉塞隅角緑内障の患者であれば疑義紹介する必要性があります。閉塞型は急性発作により隅角が閉塞して急激に眼圧が上昇する危険性があります。開放隅角緑内障であれば、隅角検査歴や手術歴の確認のみで経過観察。

急性狭隅角急性閉塞隅角

急性狭隅角や急性閉塞隅角(急性緑内障発作)では、頭痛、吐き気、目の痛み、かすみ等の症状が現れやすいと言われています。

高眼圧の状態が続き、発作症状が起きている状態で服薬指導する事はあまりないかと思います。

しかし眼科検査等で急性緑内障発作の素因(狭隅角眼、浅前房等)のある患者であれば服薬指導時に、急性緑内障発作時の症状を伝えて「発作時には絶対に服用しないように」と伝える必要があります。

これらの緑内障の違いと、患者さんの手術歴、検査歴、急性緑内障発作の素因(狭隅角眼、浅前房等)を把握しておけば、患者からの確認だけで疑義紹介の必要性を減らす事が可能かと考えられます。

まとめ(患者さんに確認する事)

開放隅角緑内障 or 閉塞隅角緑内障

手術歴の有無(線維柱帯切除術 or レーザー虹彩切開術など)

急性緑内障発作の素因(検査による狭隅角眼、浅前房など)

通常は点眼薬で眼圧のコントロールが出来ている患者さんであれば、手術済みである可能性が高いので少なくとも初回の疑義紹介で確認が取れれば安心かと思われます。

以後は種類の異なる抗コリン作用薬が出た場合でも経過観察で問題ないかと思われます。(先生によっては疑義紹介を毎回必ずしてもらいたい場合もあるのでご注意下さい)

参考:公益財団法人日本眼科学会サイト・公益社団法人日本眼科医会サイト・緑内障診療ガイドライン(第 4 版)

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