「イコサペント酸エチル粒状カプセルを簡易懸濁法でお湯に溶かしたら大変な事になった」と報告を受けました。
実際に行っていた看護師さんの話によると、倉田式簡易懸濁法に基づいて薬剤を55℃のお湯20mlで10分間シリンジ内で溶かしたところ、シリンジの黒いゴム部分が溶けているのに気がついたそうです。(※溶解後の放置時間は不明ですが、有効成分の分解や配合変化の可能性を考えて10分間以上の放置はしない事)
よって注入は中止して薬剤を出したところ黒っぽく色が付き魚臭さが充満したそうです。シリンジの目盛も溶けているとの事ですのでイコサペント酸エチル粒状カプセルが悪さをしている事は明らかです。
簡易懸濁法とは?
錠剤やカプセルを粉砕することなく55℃のお湯で崩壊懸濁することでカテーテルで胃ろうなどから経管投与する方法です。
簡便な方法なので一度手技を習得すれば、薬剤を粉砕する手間も省けるので介助者の負担が軽減されます。
水剤瓶に1回に服用する全部の薬(錠剤も散剤も一緒に)と約55℃の温湯20mLを入れてかき混ぜ、約10分間自然放置します。水剤瓶の蓋は注入器が接続できるBaxa社のものを使用していますので、蓋に注入器を接続して薬が懸濁した液を吸い取りチューブに注入します。注入器の接合部は注射器先端と同じ経のチューブとは直接接合できないので、誤接続が防止できます。注入した後、チューブを適量の水で洗い流します。
昭和大学薬学部倉田なおみ氏webサイトより引用
メーカーに確認したところ、イコサペント酸エチル製剤によるポリスチレンの溶解現象(イコサペント酸エチル製剤を含む55℃の温湯において、ポリスチレンが経時的に溶解する)が報告されていることから、ポリスチレン製以外の器具を使用することが望ましいとの事でした。
平成19年の時点でもエパデールで既に報告があがっていたことを考えると、EPA製剤を簡易懸濁法で行う場合の注意としては常識的な話であり、現場で胃瘻のある患者さんへの簡易懸濁法の対応がそれほど多くない事もあってか、あまり認知されていないようです。
1.エパデールSⓇは、ポリスチレン製品を溶解してしまうことがわかった。原料のスチレン(単量体)はシックハウス症候群との関連性が疑われている。スチレンの発がん性は2B(発がん性があるかもしれない)に分類され、健康への影響も考えられる。
2.この現象から、処方にエパデールSⓇが含まれる場合は、『材質表示が「PS」「ポリスチレン」「スチロール樹脂」の器具』(マグカップ・計量カップ・使い捨てスプーン・マドラー等)の使用を避ける必要がある。使用する材質として金属製、陶器製、ガラス製が望ましいと思われる。
3.簡易懸濁法は、病院内に限らず、施設や在宅でも急速に広まりつつある。投与する当
事者が身のまわりの器具を用いてしまう可能性も考えられるため、使用する器具の材質へ
の注意をしていかなくてはならない。
父もペグ(PEG:内視鏡を使い「おなかに小さな口」を造る手術の事)を作り、食事が取れないときに胃ろうカテーテルで一時期エンシュアやエネーボを摂取していたのですが薬は飲めたので簡易懸濁法をする事はありませんでした。
もちろんEPA製剤を服用していた事はないのですが、今後同じような患者様に出会ったときは注意点として留意しておこうと思います。
ジェネリックのEPA製剤の簡易懸濁法においても報告がありましたのでリンクしておきます。
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