先日、いつも来るおばあちゃんの家族さんがスーパーのビニール袋(ブラウンバッグ運動)にたくさんの残薬を持ってきて、「薬の整理をして欲しい」と依頼がありました。
おばあちゃんは、通常の会話では物忘れについても問題ないようで、先生の前でも、薬局でもしっかりしていて「飲み残しありません、きちんと飲んでいます!」との事でした。
しかし…飲んでいた筈のお薬が、たくさん押入れから出てきたようです。
そこで薬局で残薬の数を数えて、今回の処方箋より医師に残薬調整での削除依頼をしました。
一包化加算の算定基準
一包化加算は、処方箋の受付1回につき1回限り算定可能です。
例)算定可能な条件
- 服用時点が1つ(朝)でも、薬が3種類以上
- 服用時点が2つ以上(朝+朝夕)で、服用時点が重なっている
基本的には投与日数が、7日毎(or+端数)で34点になります。
(例:7日で34点、8日~14日で68点…)
※43日以上だと一律240点
ブラウンバッグ運動で残薬を整理して、医師への処方削除依頼により処方箋からほとんどの薬が見た目上なくなり、なんと一包化の算定基準から外れてしまいました…。
一包化加算は算定する事が出来なくなってしましました。
重複投与・相互作用防止加算
しかし残薬調整をした事によって、まず薬学管理料の重複投与相互作用防止加算(残薬調整時30点)が算定できます。
ご存知のように、重複投与相互作用防止加算は残薬調整時にも算定が可能です。
残薬調整以外 40点
なお薬剤服用歴管理指導料を算定していない場合は、重複投与相互作用防止加算を算定できません。
外来服薬支援料加算
そしてブラウンバッグ運動でも有名な、薬学管理料の「外来服薬支援料加算(注2)」の算定が出来るような気がします。
「外来服薬支援料加算」については、厚生労働省の「保険調剤の理解のために(平成30年度)」の区分14の2 外来服薬支援料に記載があります。
今回の事例では、家族からの依頼で持参残薬の整理、外来の患者さん、医師に確認、一包化指示あり、医療機関への情報提供、ブラウンバッグにより算定は可能かと思われました。
しかし、患者さんが処方箋を一緒に持参していました。
外来服薬支援料の算定は処方箋によらず服薬支援をするものですので、単独のレセプトで作成します。
以下の(4)にもあるように、外来服薬支援料は、「処方箋によらず調剤済みの薬剤について服薬管理の支援を目的」としています。
そして日医工MPSには、残薬確認で日数調整した場合は外来服薬支援料でなく重複投与相互作用防止加算を算定とも書いてあります。
その一方で「2008/3/28 疑義解釈その1」によると、一包化指示の処方箋と他薬局の薬剤を一緒に持ってきた場合は、調剤にかかる薬剤服用歴管理指導料と外来服薬支援料の併算定は可能との記載があります。
疑義解釈の【外来服薬支援料】(問8)を見てみましょう。
【外来服薬支援料】
(問8)患者が、処方医からの一包化薬の指示がある処方せんとともに、他の薬局で調剤された薬剤や保険医療機関で院内投薬された薬剤も併せて薬局に持参した場合であって、処方せんに基づく調剤を行う際にすべての薬剤の一包化を行い、服薬支援を行った場合には、調剤に係る薬剤服用歴管理指導料等と外来服薬支援料の併算定が可能か。(答) 調剤に係る薬剤服用歴管理指導料等及び外来服薬支援料それぞれの要件を満たしている場合には、併算定は可能である。ただし、外来服薬支援料を算定する場合には、処方せんに基づく調剤に係る調剤料については、一包化薬の調剤料ではなく内服薬の調剤料として算定すること。
厚生労働省の疑義解釈資料より引用
保険調剤の見解は都道府県や担当者により異なる場合もありますので、必ず地域の薬剤師会や社会保険庁などに確認をお願い致します。
<薬学管理料>
区分14の2 外来服薬支援料(1)外来服薬支援料は、保険薬局の保険薬剤師が、自己による服薬管理が困難な外来の患者若しくはその家族等又は保険医療機関の求めに応じ、当該患者又はその家族等が持参した服薬中の薬剤について、治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性を判断し、当該薬剤を処方した保険医にその必要性につき了解を得た上で、一包化や服薬カレンダーの活用等により薬剤を整理し、日々の服薬管理が容易になるよう支援した場合に、「注1」及び「注2」合わせて服薬支援1回につき、月1回に限り算定する。
また、患者の来局時のほか、患者の求めに応じて保険薬剤師が患者を訪問して服用薬の整理等を行った場合でも算定できる。
この場合、訪問に要した交通費(実費)は患家の負担とする。なお、服薬管理を容易にするような整理を行わずに単に服薬指導を行っただけでは算定できない。
(2)「注1」については、外来服薬支援を行うに当たり、患者が、当該保険薬局で調剤した薬剤以外に他の保険薬局で調剤された薬剤や保険医療機関で院内投薬された薬剤を服用していないか確認し、極力これらの薬剤も含めて整理するよう努める。
また、実際にこれらの薬剤も含めて服薬支援を行う場合には、重複投薬、相互作用等の有無を確認し、処方医83資料2 診療報酬の算定方法 別表第三 調剤報酬点数表(抄)に必要な照会を行い、適切な措置を講じる。
なお、患者に対する服薬中の薬剤の確認や処方医への照会等を行った上で、結果として、他の保険薬局で調剤された薬剤又は保険医療機関で院内投薬された薬剤のみについて服薬支援を行うこととなった場合(当該保険薬局で調剤を受けていない患者が持参した、他の保険薬局で調剤された薬剤や保険医療機関で院内投薬された薬剤について服薬支援を行う場合を含む。)でも算定できる。
(3)「注2」については、患者が保険薬局に持参した服用中の薬剤等の服薬管理を行い、その結果を関係する保険医療機関へ情報提供した場合に算定できる。
算定に当たっては、あらかじめ、患者又はその家族等に対して、保険薬局へ服用中の薬剤等を持参する動機付けのために薬剤等を入れる袋等を提供し、患者等が薬剤等を持参することで服薬管理を行う取組(いわゆるブラウンバッグ運動)を周知しておく。
(4)外来服薬支援は、処方箋によらず、調剤済みの薬剤について服薬管理の支援を目的として行うものであるため、薬剤の一包化を行った場合でも、調剤技術料は算定できない。
(5)薬剤の一包化による服薬支援は、多種類の薬剤が投与されている患者においてしばしばみられる薬剤の飲み忘れ、飲み誤りを防止すること又は心身の特性により錠剤等を直接の被包から取り出して服用することが困難な患者に配慮することを目的とし、治療上の必要性が認められる場合に行うものである点に留意する。
(6)外来服薬支援料を算定する場合は、服薬支援に係る薬剤の処方医の了解を得た旨又は情報提供した内容並びに当該薬剤の名称、服薬支援の内容及び理由を薬剤服用歴の記録に記載する。
(7)外来服薬支援料は、「区分番号15」の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。また、現に他の保険医療機関又は保険薬局の薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている患者についても算定できない。
注1 自己による服薬管理が困難な患者若しくはその家族等又は保険医療機関の求めに応じて、当該患者が服薬中の薬剤について、当該薬剤を処方した保険医に当該薬剤の治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性を確認した上で、患者の服薬管理を支援した場合に月1回に限り算定する。
注2 患者若しくはその家族等又は保険医療機関の求めに応じて、患者又はその家族等が保険薬局に持参した服用薬の整理等の服薬管理を行い、その結果を保険医療機関に情報提供した場合についても、所定点数を算定できる。
注意3 区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定しない。
文字の羅列を見てもよく分からないので、日医工さんのサイトに一包化加算と外来服薬支援料の比較表が掲載されていましたので参考にしてください。
日医工サイトより引用
参考:保険調剤Q&A 平成30年版 (調剤報酬点数のポイント)
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