アモバンの7.5mgを服用中の患者さんから下記の問い合わせがありました。
「アモバン1錠だと少し強いから先生の許可をもらって、現在はアモバン7.5mgを割って1日に1/3だけ服用しているんだけどもっと小さい規格はありませんか?」
アモバンは楕円なので均等に1/3で割る事は難しいかと思いますが、これで上手く行っているそうです。
アモバンの規格は7.5mgが最も小さい規格になるので、ルネスタを考えてみました。
ご存知のようにルネスタは、ラセミ体であるアモバンの(S)エナンチオマーで薬理活性の大部分を有しています。
しかし単純にアモバン7.5mgは、半分の量であるルネスタ3.75mgが等価と考える事はできないかと思い調べてみました。
アモバンとルネスタの関係
アモバンの名称由来は、「特に無し」です。
ルネスタの名称由来は米国の製品名「LUNESTAⓇ」から来ています。
米国での販売名「Lunesta」が、「Luna(月)+Star(星)」なので、皆さんも月と星が入ったキャラクターのツキノワグマ?を見た事はあるかと思います。
出典:エーザイ株式会社
ルネスタは、ラセミ体であるアモバン(ゾピクロン)を光学分割したS体である(エスゾピクロン)の製剤で薬理活性の大部分を有しています。
イオンチャネル型のアミノ酪酸GABAA受容体複合体に結合し、GABAの効果を増強して催眠作用および鎮静作用を発揮します。
そして不眠症の主症状である入眠障害と中途覚醒のいずれにも有効とされています。
出典:エーザイ株式会社
ルネスタは向精神薬に指定されていない
2016年10月に、アモバン(ゾピクロン)は向精神薬に指定されました。
しかしながら、ルネスタ(エスゾピクロン)は指定されていないので投薬期間に関する制限がなく、医師が必要と判断した日数を処方されます。
そしてロゼレムやベルソムラと同じく普通棚での保管で問題ありません。
アモバン・ルネスタの規格、用法用量は?
アモバン(ゾピクロン)は、7.5mg・10mgの規格があります。
用法用量は不眠症では通常、成人1回ゾピクロンとして、7.5~10mgを就寝前に経口投与します。
年齢・症状により適宜増減しますが、10mgを超えない事となっています。
ルネスタ(エスゾピクロン)は、1mg・2mg・3mgの規格があります。
用法用量は通常、成人にはエスゾピクロンとして 1回2mgを、高齢者には1回1 mgを就寝前に経口投与します。
症状により適宜増減するが、成人1回3mg、高齢者は1回2mgを超えない事となっています。
アモバンとルネスタの等価用量は?
インタビューフォーム国内試験の第Ⅱ、Ⅲ相試験等では、ルネスタ、とマイスリー(ゾルピデム)、プラセボとの比較のため詳細はわかりませんでした。
そこで日本精神科評価尺度研究会様の向精神薬の等価換算表「稲垣&稲田(2017)版」と参考にさせて頂きました。
こちらによると(ゾピクロン7.5mg ≒ エスゾピクロン2.5mg)が等価との評価です。
単純に半分でないのは様々な理由が考えられますが、インタビューフォームのClチャネルに対する結合親和性が関係していそうです。
エスゾピクロン・ゾピクロン・(R)ゾピクロンを比較した「Clチャネルに対する結合親和性」は以下になります。
- エスゾピクロン:10Ki(nmol/L)
- ゾピクロン:25Ki(nmol/L)
- (R)ゾピクロン:※算出できず
※最高濃度(10μmol/L)でも50%以上の結合親和性を示さなかったので算出できず
エスゾピクロンがClチャネル結合部位に対する結合親和性が高い事がわかります。
また結合親和性の本体エスゾピクロンの代謝物である(S)脱メチルゾピクロンもベンゾジアゼピン結合部位に対して若干の親和性を示す事も、ルネスタがより少ない用量で効果がみられると考えられると思われます。
よって…この患者さんの場合では、7.5mgを1/3に分割しているそうなので、ルネスタの1mgくらいが良いのかもしれません。
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