耳鼻咽喉科の門前では必ずと言っていいほど目にするマクロライド少量長期療法(マクロライド療法)の処方箋ですが、延々と出続ける薬に患者さんから「いったいいつまで続ければいいのか?」と不信感を持たれる事が少なくないかと思われます。
病院の先生に直接聞くことは少ないようで薬局で質問される方が多いように思います。日経メディカルの記事に「マクロライド療法に落とし穴」という内容で、慢性副鼻腔炎だから即マクロライド療法を選択する事について苦言を呈する記事が掲載されていました。
「慢性副鼻腔炎だからといって、即、マクロライド療法を選択しないでほしい」。こう要望するのは、滋賀医科大学耳鼻咽喉科学講座教授の清水猛史氏。マクロライド療法を選択する際は、昨今、患者数が増えている好酸球性副鼻腔炎を除外する必要があるという。
日経メディカルより引用
清水氏は「好中球性副鼻腔炎」と診断しマクロライド療法を開始したものの、治療効果が十分得られない場合は診断に立ち返ることが重要と述べている。
漠然とマクロライド療法が続く患者さんの場合、薬局が疑義紹介をするタイミングはいつ頃が良いのでしょうか?医師も当然効果判定をしながら投薬を継続しているので、薬局側で勝手な判断をして服薬中止になるような言動を患者さんにするのは問題となります。
清水氏はマクロライド療法は、2~4週間で効果を発現し、2~3カ月で治療効果はプラトー(安定状態)に達するため、治療開始から数カ月たっても効果が得られない場合は、手術を含めた他の治療法を選択するとの事。
マクロライド療法ガイドライン(試案)にも、有効症例でも3~6ヶ月で一度打ち切るとされているので、それまでに患者さんから聞き取りをして漠然とマクロライド療法が続く患者さんには一度疑義紹介しても良いのではないでしょうか。
聞き取りでは、副鼻腔炎が「好中球性副鼻腔炎」であるか「好酸球性副鼻腔炎」の確認も必要かと思われます。
好中球性副鼻腔炎とは?
「好中球性副鼻腔炎」は細菌やウイルスの感染などを起因としたもので、マクロライド療法が有効なのは好中球性副鼻腔炎とされています。
細菌性の副鼻腔炎である好中球性副鼻腔炎は、CT検査での陰影からも上顎洞に多く発生するとされている。
三国志に出てくる五虎大将軍には、黄忠(こうちゅう)という老齢の将軍が出てきます。
こうちゅう球性副鼻腔炎にはマクロライド療法が有効です、忘れないでおきましょう。
好酸球性副鼻腔炎とは?
「好酸球性副鼻腔炎」はマクロライド療法に抵抗性を示し、難治性で好酸球による浸潤がみられた副鼻腔炎です。
好酸球がアレルギー反応の制御を担っている事からも、アレルギー的な過敏症を呈するもので、既往歴に喘息を持っている可能性も高いとされている。
好酸球性副鼻腔炎は、マクロライド療法の効果が乏しく、治療は鼻噴霧ステロイド薬や内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)が有用とされている。
つまり‥
処方内容が数ヶ月でマクロライドから鼻噴霧ステロイドに変更になった場合は「好酸球性副鼻腔炎かな?」と気がつけるようにしたいものです。
※診断的治療として鼻噴霧ステロイド薬を処方をする事も多いようです。
病院では好酸球性副鼻腔炎の診断基準として、両側の病側、鼻茸の有無、血液検査で好酸球の割合(10%以上だと好酸球性の可能性が高い)、CT検査で篩骨洞を中心の陰影などを総合して診断をします。
・鼻閉と嗅覚障害が主症状
・喘息を合併することが多い
・吸引できない粘性の鼻汁
・膿性の鼻漏はない
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