こむら返りで定番の芍薬甘草湯が出ていた患者さんが「カリウムの値が悪いから先生が一旦中止するように言ってました」とのお話でした。甘草(マメ科ウラルカンゾウ)(芍薬甘草湯1日量7.5gに対して甘草は6.0g含有)による低カリウム血漿の副作用が出ている様です。
低カリウム血漿の初期症状:手足のしびれ、筋肉痛、全身のだるさ、脱力感、CK上昇、不整脈など
血清中のカリウム値は3.6~5.0mEq/Lが基準の値となっています。
高カリウム血症の基準は5.5mEq/L以上
低カリウム血症の基準は3.5mEq/L以下
そして芍薬甘草湯の禁忌には低カリウム血漿のある患者とあります。(通常1日量の甘草が2.5g以上含有する製剤は,低カリウム血症のある患者には禁忌)
禁忌 次の患者には投与しないこと
アルドステロン症の患者
ミオパチーのある患者
低カリウム血症のある患者
どういった機序でカリウム値が低下するのでしょうか?
低カリウム血漿の発生機序
グリチルリチンを含む漢方薬、かぜ薬、胃腸薬などでは、偽アルドステロン症が引き起こされることがあります。これにともないカリウムの喪失が起こるとされています。
発症機序
甘草成分由来のグリチルリチン酸が、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)⇒(コルチゾン)の変換酵素を阻害
増加した(コルチゾール⇑)が尿細管の(鉱質コルチコイド受容体)に作用
(Na⇑再吸収促進)⇒(K⇓排泄増加)低カリウム血症
甘草による低カリウム血症が疑われた場合、まず甘草含有製剤を中止する。通常は甘草含有製剤を中止すると数日~数週間すると回復傾向が見られます。カリウム製剤(スローケーやアスパラKなど)、スピロノラクトン(K保持性利尿薬)の投与が行われることもあります。
偽アルドステロン症について詳しくは、厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル:偽アルドステロン症」を参照ください