事業承継案件の紹介をうける場合の秘密保持契約

独立開業
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調剤薬局の承継を行う場合に多くの場合は、M&A業者から承継案件について紹介を受けて秘密保持契約書を締結する事になります。

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秘密保持契約とは?

紹介会社より承継を検討している案件のより詳しい情報(薬局名や処方箋の受付情報など)を開示する場合に秘密保持契約を締結する必要があります。

秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)とは、M&Aや知的財産権の関連業務で使用されることが多い契約です。

民法では秘密保持契約という言葉は出てきませんが、既に公開済み以外の情報を公開することがないように契約で拘束するといった意味合いを持ちます。

調剤薬局の承継での秘密保持契約では、承継を考えている薬剤師は情報を開示する側でなく受け取る側になりますので不利益をこうむる可能性は低いかと思われます。

しかし安易に考えて情報を漏洩すると、後々大きな問題になる場合がありますので開示された情報の取り扱いには十分な注意が必要です。

秘密保持契約書の雛形

経済産業省のサイトからも秘密保持契約書の雛形がダウンロードできますので一部を抜粋してみたいと思います。

企業間の秘密保持契約書のため、乙を薬剤師個人に置き換えて下さい。

秘密保持契約書

株式会社(以下「甲」という。)と 株式会社(以下「乙」という。)とは、○○ について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。
ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。

① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

第2条(秘密情報等の取扱い)
1.甲又は乙は、相手方から開示を受けた秘密情報及び秘密情報を含む記録媒体若しくは物件(複写物及び複製物を含む。以下「秘密情報等」という。)の取扱いについて、次の各号に定める事項を遵守するものとする。

① 情報取扱管理者を定め、相手方から開示された秘密情報等を、善良なる管理者としての注意義務をもって厳重に保管、管理する。
② 秘密情報等は、本取引の目的以外には使用しないものとする。
③ 秘密情報等を複製する場合には、本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製物は、原本と同等の保管、管理をする。
④ 漏えい、紛失、盗難、盗用等の事態が発生し、又はそのおそれがあることを知った場合は、直ちにその旨を相手方に書面をもって通知する。
⑤ 秘密情報の管理について、取扱責任者を定め、書面をもって取扱責任者の氏名及び連絡先を相手方に通知する。

2.甲又は乙は、次項に定める場合を除き、秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。

3.甲又は乙は、法令に基づき秘密情報等の開示が義務づけられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。

第3条(返還義務等)
1.本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに相手方に返還するものとする。
2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれているときは、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていないときは、その旨)を相手方に書面にて報告するものとする。

第4条(損害賠償等)
甲若しくは乙、甲若しくは乙の従業員若しくは元従業員又は第二条第二項の第三者が相手方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、甲又は乙は、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第5条(有効期限)
本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする。

第6条(協議事項)
本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。

第7条(管轄)
本契約に関する紛争については○○地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。本契約締結の証として、本書を二通作成し、両者署名又は記名捺印の上、各自一通を保有する。

平成 年 月 日
(甲)
(乙)

経済産業省サイトより引用

秘密保持契約書の注意点

承継案件について紹介を受けたものの、コンサルタントの経験や知識が不足していたり信用に値しない人間であれば誰にも相談出来ずに一人で悩む事になります。

そのために相場とかけ離れた内容で、事業譲渡契約を締結してしまう可能性も十分に考えられます。

各社において様々な秘密保持契約書の雛形が存在しますので、条項の確認をして信用できる人物や税理士に相談する場合であっても情報の漏洩に当たらないか十分注意しましょう。

第1条(秘密情報)でいう「秘密情報の範囲」ですが、情報の開示前に既に保有していた情報は秘密情報とはなりえません。

他のM&A業者から開示を受けていた同じ案件であれば、有利で信頼のおける業者と契約する事をお勧めいたします。

第2条(秘密情報等の取扱い)での第3者への開示においては、基本的に相手方の事前承諾が必要になります。

契約書によっては「本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務」が「秘密情報の取り扱いについて十分説明を行うものとする」など最低限行うべき内容である場合もあります。

第4条(損害賠償等)

民法における損害賠償の範囲は、通常損害だけでなく「予見可能性のある特別損害のすべて」とされていますが(民法416条)、契約上の義務違反では弁護士費用までは認められないのが一般的になっています。

「直接かつ現実に生じた損害の賠償をしなければならない」など、損害賠償の範囲は出来る限り狭い秘密保持契約が理想的です。

第5条(有効期限)

従来は5年程度であったが、最近では長くても3年程度である事が多い。しかし個人情報が含まれる場合は長期間(無期限)の秘密保持期限が課される場合も珍しくない。

紹介を受けた案件の詳細情報が増えてくると、書面やメール添付情報など多岐にわたってきます。情報の取り扱いには十分に気を付けてください。

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