トリプタノール(アミトリプチリン)は三環系抗うつ薬(TCA)

薬の勉強
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三環系抗うつ薬(TCA)であるトリプタノール(アミトリプチリン)は、セロトニン受容体に働く片頭痛薬であるトリプタン系製剤に似た名称をしています。

トリプタノール(アミトリプチリン塩酸塩錠)は古くからある三環系抗うつ薬(TCA)です。

名称の由来は一般名の洋名(Amitriptyline Hydrochloride)のアルファベットを組み合わせたものだそうです。頭文字だけを抜き取っているわけではないので意味のないアナグラムみたいな感じでしょうか。

構造式を見ると三環系なのでTCAだとすぐにわかりますが、名称で偏頭痛治療薬のトリプタミン系製剤と勘違いしないようにしましょう。

トリプタミン系製剤は構造中のトリプタミン骨格から来ています。

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トリプタノールの適応症は3種類

  • うつ病・うつ状態:成人 1 日30~75mgを初期用量とし、 1 日150mgまで漸増し、分割経口投与する。まれに300mgまで増量することもある。(年齢、症状により適宜減量)
  • 夜尿症:1 日10~30mgを就寝前に経口投与する。(年齢、症状により適宜減量)
  • 末梢性神経障害性疼痛:通常、成人 1 日10mgを初期用量とし、その後、年齢、症状により適宜増減するが、 1 日150mgを超えないこと。

トリプタノールは精神科で三環系抗うつ剤として使用される事が多いかと思われますが、夜尿症に対する薬物療法として夜尿症診療ガイドラインにも記載されメタ解析でも有効性が証明されています。

※メタ解析(メタアナリシス:過去の複数の臨床研究のデータを集めて統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。

アナフラニール≻トフラニール≻トリプタノール等がありこの順序で効果が強いとされている。

アナフラニールの適応症は遺尿症、トフラニールの適応症は遺尿症(昼・夜)となっています。

夜尿症と遺尿症の違いは、夜尿症はおねしょとも呼ばれ夜間睡眠中に排尿がみられるもので、遺尿は昼間目が覚めているときに尿がもれてしまうことをいいます。

夜尿症に対する薬理作用としては、尿意覚醒作用、抗コリン作用、尿量減少作用などが知られています。

ちなみにトリプタノールが、夜尿症や末梢性神経障害性疼痛で処方されている場合は、特定薬剤管理指導(ハイリスク加算1:10点)の対象外なので注意が必要です。

ハイリスク薬

  1. 抗悪性腫瘍剤
  2. 免疫抑制剤
  3. 不整脈用剤
  4. 抗てんかん剤
  5. 血液凝固阻止剤
  6. ジギタリス製剤
  7. テオフィリン製剤
  8. 精神神経用剤
  9. 糖尿病用剤
  10. 膵臓ホルモン剤
  11. 抗HIV薬

末梢性神経障害性疼痛の適応について

三環系抗うつ薬のトリプタノールはガイドラインでは第一選択薬(複数の病態に大して有効性が確認されている薬物)として記載されています。

推奨度、エビデンス総体の総括は1B。

Minds:ガイドラインライブラリ

神経障害性疼痛に対する鎮痛効果は、治療必要数(NNT:number needed to treat)が最も低い事からも三環系抗うつ薬は最も効果のある薬物の一つとされています。

帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害による痛みやしびれ、外傷性神経損傷後疼痛、慢性腰痛、線維筋痛症、そのほか中枢性下行性抑制系の鎮痛作用など多くの症例で優位な鎮痛効果が認められています。

主な鎮痛作用機序は、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み阻害作用により、下行性疼痛抑制系を賦活化することで鎮痛作用を発揮すると考えられています。

副作用は三環系抗うつ薬の代表的な副作用である、口渇、便秘などがあげられます。また、頻脈や脚ブロック、ST及びT波の変化、起立性低血圧など心毒性にも注意が必要です。

3級アミンTCAと2級アミンTCAの違いは?

  • 3級アミンTCA
    トリプタノール(アミトリプチリン)トフラニール(イミプラミン)アナフラニール(クロミプラミン)
  • 活性代謝物である2級アミンTCA
    ノリトレン(ノルトリプチリン)デシプラミン(販売中止)

3級アミンTCAはセロトニンやノルアドレナリンの再取り込み阻害作用のバランスが取れていて、鎮痛効果がやや高いとされています。

2級アミンTCAは比較的ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害して、副作用に対する認容性が高いとされています。

参考文献:神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン

トリプタノールの禁忌

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

  • 緑内障のある患者〔抗コリン作用を有するため、緑内障が悪化するおそれがある。〕
  • 三環系抗うつ剤に対し過敏症の患者
  • 心筋梗塞の回復初期の患者〔循環器系に影響を及ぼすことがあり、心筋梗塞が悪化するおそれがある。〕
  • 尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔抗コリン作用を有するため、症状が悪化するおそれがある。〕
  • モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩)を投与中あるいは投与中止後 2 週間以内の患者〔「相互作用」の項参照〕

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