リーバクト(分岐鎖アミノ酸製剤)を処方されている患者さんが来られたので、学生時代に習ってから忘れてしまっている肝性脳症との関係について思い出してみました。
EAファーマ株式会社より引用
リーバクトは何の治療薬?
リーバクトの成分はBCAA、つまり分岐鎖アミノ酸を主成分としています。
リーバクトに含まれるアミノ酸は、配合顆粒1包(4.15g)に以下の成分を含有しています。
- L-イソロイシン 952 mg
- L-ロイシン 1904 mg
- L-バリン 1144 mg
効能効果は以下になりますが、使用上の注意にとして記載があります。
(効能効果)
食事摂取量が十分にもかかわらず※低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善
アルブミンとは血清成分の一つです、肝臓で合成されタンパク量の指標とされています。つまり血清アルブミンの測定により栄養状態が把握できます。※低アルブミン血漿の肝硬変患者は生命予後が悪い。
〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
1.本剤の適用対象となる患者は、血清アルブミン値が3.5g/dL 以下の低アルブミン血症を呈し、腹水・浮腫又は肝性脳症を現有するかその既往のある非代償性肝硬変患者のうち、食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する患者、又は、糖尿病や肝性脳症の合併等で総熱量や総蛋白(アミノ酸)量の制限が必要な患者である。糖尿病や肝性脳症の合併等がなく、かつ、十分な食事摂取が可能にもかかわらず食事摂取量が不足の場合には食事指導を行うこと。なお、肝性脳症の発現等が原因で食事摂取量不足の場合には熱量及び蛋白質(アミノ酸)を含む薬剤を投与すること。
2.次の患者は肝硬変が高度に進行しているため本剤の効果が期待できないので投与しないこと。
1)肝性脳症で昏睡度が 3 度以上の患者
2)総ビリルビン値が3 mg/dL 以上の患者
3)肝臓での蛋白合成能が著しく低下した患者
肝性脳症の記載がたくさんありますが肝性脳症とはどういった症状でしょうか?
肝性脳症とは?
まず肝臓の働きは、肝動脈と門脈から酸素や栄養を取り入れて肝静脈から栄養を送り出します。この過程で代謝したり栄養を作ったり、有害な物質(アルコール、薬剤、アンモニアなど)を解毒したりします。
肝臓の機能が低下すると、通常は肝臓で解毒される物質であるアンモニアが血液中に増加して脳に到達して「肝性脳症」を引き起こします。
アンモニアは脳に様々な影響を与え、その結果として意識障害や異常行動を引き起こします。さらに進行すると昏睡状態に陥ります。
よってアンモニアが悪さをするのであれば、アンモニアを減らす必要があります。
肝不全の治療薬にはどんなものがあるか?
BCAA製剤:アンモニアの解毒に必要なアミノ酸バランスを補正(リーバクト、アミノレバンなど)
合成二糖類:腸管内のアンモニアの産生と吸収を抑制、腸管機能改善(モニラック・ラクツロースなど)
難吸収性抗菌薬:腸内アンモニア産生細菌に作用してアンモニア産生抑制(リフキシマ(般:リファキシミン))
アンモニアの解毒とアミノ酸のバランスの関係は?
分岐鎖アミノ酸 (BCAA) は、枝分かれ構造を持つ必須アミノ酸(体内で作ることができない:バリン、ロイシン、イソロイシン)です。
昨今BCAAが筋肉のトレーニングなどで注目されるのは、BCAAが筋肉で使用されると筋肉のたんぱく質の崩壊抑制作用、筋たんぱく合成作用があるためです。
そして肝硬変の患者は肝臓の機能が低下しているので、筋肉で使用されるアミノ酸BCAAが多く消費されると考えられています。
フィッシャー比(BCAA/AAA)で有名なFischer氏は、肝硬変の患者において血漿中BCAA(branched-chain amino acid)の低下と芳香族アミノ酸 (AAA:Aromatic amino acid) の上昇を発見しました。
※Fischer比(BCAA の AAA に対する比):Fischer比が低下すると脳症が増え、BCAA投与でFischer比が上昇すると脳症改善する事がわかっている。
※芳香族アミノ酸(AAA)と分岐鎖アミノ酸(BCAA:)は、血液脳関門(BBB)で同じトランスポーターを使用します。
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