高齢患者からの便秘症に関する相談に薬局で提案できることは?

役に立つ話
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最近ご高齢の患者さんから便秘に関する相談をよく受けるのですが、たいていの場合は水分と食物繊維の摂取(水溶性食物繊維を多めに摂取)や腹壁の軽いマッサージや運動等の保存的治療における生活習慣の改善を提案しています。

しかし改善が見られない場合に大腸刺激性薬剤であるピコスルファートやセンノシドが増えていくといったパターンが散見されるので、改めてガイドライン等を調べて薬局で提案できる事がないのかを考えてみました。

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慢性便秘症とは?

慢性便秘症の診断基準ですが、以下1.(a~f)の2項目を満たすだけで便秘症になります。それが半年前からあり、直近3ヶ月その状態だと慢性便秘症と診断されます。

よってコロコロ便で強くいきむ傾向が、排便の1/4超だと便秘症という事になります。

しかし高齢者の患者さんから聞く事の多い

おばあさん

「若い頃に毎日あった排便が、今では週に3回位しかない」

といった訴えの場合は便秘症とは言えないので、無理にセンノシド錠を毎日服用して排便する必要はない旨を説明して理解してもらいましょう。

1.「便秘症」の診断基準 以下の6項目のうち、2項目以上を満たす

a. 排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
b. 排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便(BSFS:ブリストル便形状スケールでタイプ1か2)である。
c. 排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。
d. 排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
e. 排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である(摘便・会陰部圧迫など)。
f. 自発的な排便回数が、週に3回未満である。

2.「慢性」の診断基準

6ヵ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間は上記の基準を満たしていること。

慢性便秘症診療ガイドライン2017より引用

慢性便秘症の患者さんへ薬局でできる提案

慢性便秘症の治療には保存的治療外科的治療がありますが、薬局で提案できる治療は保存的治療に沿ったものになります。

患者さんの薬歴から器質的疾患(大腸がんや腸閉塞等)や症候性(DM、甲状腺機能低下症、パーキンソン等)に関する便秘の可能性、そして食事や水分摂取量自体が減った事による排便回数の減少ではないのか等を確認します。

慢性便秘症は、症状等から排便回数減少型排便困難型に分けて考えると患者さんにとっても理解しやすいかと思われます。

また高齢者では腹圧の低下や直腸感覚・収縮力低下による老年症候群による便秘症、また多くの薬剤を服用している事から薬剤性便秘の可能性も考えなくてはなりません。

よって便秘が器質的や症候性でない事を判断して、服用している薬が原因である薬剤性の便秘であれば薬剤変更などの提案をトレーシングレポート等によってする事が可能となります。

パーキンソン病による便秘

先日相談を受けた患者さんはパーキンソン病の患者さんだったのですが、パーキンソン病の原因となるタンパク質が腸管の神経叢に影響した便秘の可能性と、抗パーキンソン病薬による薬剤性便秘の両方が考えられます。

病気による初期のものであればレボドパの使用で改善する事が知られています。

薬剤性であれば抗パーキンソン病薬を変更する事や、便秘薬である酸化マグネシウムや消化管運動促進薬、必要な時に新レシカルボン坐薬などを使い分ける事で排便コントロールを提案してみます。

新レシカルボン坐薬の名称は、主剤の炭酸水素ナトリウム(sodium hydrogencarbonate)、 乳化剤のレシチン(lecithin)より命名されています。

作用機序:直腸内で融解してCO2を徐々に発生し、このCO2により直腸粘膜を刺激、また直腸を拡張し、拡張反射により排便刺激を与える。また、直腸粘膜に対する拡張刺激がS状結腸に伝わり、大腸の蠕動運動を誘発する。

副交感神経の低下による便秘

副交感神経の働きが低下する事で腸の働きが悪くなる機能性便秘には3種類あります。

  • 弛緩性便秘:大腸の蠕動運動が弱くなる(高齢者に多い)
  • 痙攣性便秘:大腸の蠕動運動が過剰になる
  • 直腸性便秘:直腸反射が弱く便意を感じにくくなる

大腸の蠕動運動に働く副交感神経は加齢に伴って徐々に低下していくため、高齢者では弛緩性便秘の割合が多くなっていきます。

また痙攣性便秘で考えられる事は、ストレス等がかかっている状態で交感神経が優位に働いているので、リラックスして副交感神経を優位にする必要があります。

直腸性便秘は脊髄障害や知覚の低下により直腸に便がきても便意を感じにくくなっています。その場合には排便習慣の指導が重要になってきます。

排便習慣等の指導

朝起きたら太陽の光を浴びて、出来るだけ朝食を食べる習慣をつけましょう。

そして便意が無くても朝と夕食後にトイレに行って便座に座る(朝だけ新レシカルボン坐剤を使う等)といった排便習慣を身につける事で直腸の知覚が回復する場合があります。

運動習慣がない場合は、高齢者のための排便体操を指導する。

※大腸刺激性の下剤は長期連用する事で効きにくくなり、徐々に使用量が増えていき腸の機能低下の誘因となります。特にセンナ、大黄、アロエ等のアントラキノン系下剤の長期連用が原因である大腸メラノーシスを伴う常習性便秘症は、下剤なしでの排便が困難になる事が考えられます。

よって便秘薬は効果の異なるものを使い分けて自然な排便を取り戻すように使用する必要があります。薬剤の使い分けに関しては看護roo!さんのサイトに非常に分かりやすくまとまっていましたので、リンクにてご紹介させていただきます。

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