患者様より「糖尿病患者が市販の風邪薬に服用時は医師や薬剤師に相談してくださいと書かれてあったのですがなぜですか?」と電話にて問い合わせがありました。
服用しているお薬を確認したところパブロンメディカルCという大正製薬の咳がつらい風邪に販売されているものです。添付文書には確かに以下のように書かれてありました。
次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
(1)医師又は歯科医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
(4)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。
高熱、排尿困難
(6)次の診断を受けた人。
甲状腺機能障害、糖尿病、心臓病、高血圧、肝臓病、腎臓病、緑内障、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、呼吸機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満症*
(7)次の病気にかかったことのある人。
胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病パブロンメディカルC添付文書より引用
成分を見てみると案の定、dl̶メチルエフェドリン塩酸塩 20mg(気管支を広げ、呼吸を楽にして、せきをしずめます)と記載がありました。
医療用医薬品でもメチエフと呼ばれる(dl̶メチルエフェドリン塩酸塩 )が田辺三菱から販売されていますがこちらの添付文書にも同じように記載がありました。
【使用上の注意】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
1)甲状腺機能亢進症の患者〔交感神経刺激作用により甲状腺機能亢進症を悪化させるおそれがある。〕
2)高血圧症の患者〔交感神経刺激作用により高血圧症状を悪化させるおそれがある。〕
3)心疾患のある患者〔交感神経刺激作用により心拍数が増加し、心臓に過負荷をかけることがあるため、症状を悪化させるおそれがある。〕
4)糖尿病の患者〔交感神経刺激作用により糖代謝を促進し、血中グルコースを増加させるおそれがある。〕メチエフ添付文書より引用
つまりdl̶メチルエフェドリンは糖代謝を促進する作用がある。結果、血中のグルコース(ブドウ糖)が増加する事で血糖値が上昇するということみたいです。
ちなみにエフェドリンは麻黄湯に含まれている筈ですが、ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)の添付文書には血糖値上昇については特に記載はありませんでした。
エフェドリンとメチルエフェドリンの違いかな?と思ったので日本薬局方 エフェドリン塩酸塩散10%「マルイシ」の添付文書を見たのですが使用上の注意に記載があったので、麻黄湯の含有成分を考えるとエフェドリンの量が少ないので記載がなかったのかもしれません。
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺機能亢進症が悪化するおそれがある。]
(2)高血圧症の患者[本剤には血圧上昇作用がある。]
(3)心疾患のある患者[本剤には心刺激作用がある。]
(4)糖尿病の患者[血糖が上昇するおそれがある。]
(5)緑内障の患者[眼圧が上昇するおそれがある。]
(6)前立腺肥大症の患者[排尿障害が悪化するおそれがある。]エフェドリン塩酸塩散10%「マルイシ」添付文書より引用
エフェドリンとメチルエフェドリンの違いは?
麻黄に含まれる成分エフェドリンは、化学構造中に不斉炭素が2つあるので異性体が4つあります。
末梢性作用
α1作用(血管収縮など)
β1作用(心臓刺激など)
β2作用(気管支拡張など)
中枢性作用
鎮咳作用、興奮作用など
メチルエフェドリンは、エフェドリンのアミノ基が1つ多くメチル基になっているだけです。エフェドリンに比べてβ2作用が強いく、他の作用が弱いため副作用が少なく安全性が高いためOTCなどの風邪薬などに利用されています。
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