処方内容
患者さんから「顔の皮膚炎にステロイドでなく抗真菌薬がでているんだけど、水虫(白癬菌)が原因って事なの?」と聞かれました。
処方内容
- ニゾラール(ケトコナゾール)クリーム 1日2回 患部:顔に塗布
- フラビタン錠10㎎ 3錠 分3 毎食後
- ピドキサール錠20㎎ 3錠 分3 毎食後
この患者さんは抗真菌薬を足の水虫(白癬菌)の時にも処方された事があるので、ニゾラールクリームが水虫の薬だと既に認識されていました。
今回のニゾラールクリームは塗布する部位が顔の皮膚炎症部位に1日2回であり、さらに内服薬にビタミンB2・B6製剤が処方されている事からも、脂漏性皮膚炎が疑われます。
よって同じ真菌症ではありますが、白癬菌ではなくマラセチア属真菌と考えられます。
表在性皮膚真菌症
表在性皮膚真菌症では白癬によるものが最も多く、次にカンジダ症、そしてマラセチアの順番でこの3種類で皮膚真菌症のほとんどを占めます。
白癬菌やカンジタ症との鑑別のために、KOH法で真菌の直接鏡検を行い菌種ごとに効果の高い抗真菌薬を選択する事が重要となります。
頭部の白癬菌を誤診してステロイド外用薬を塗布するとケルスス禿瘡(とくそう)になるので注意が必要である。
また頭部の脂漏性皮膚炎と尋常性乾癬との鑑別にも気を付けなければなりません。
尋常性乾癬の治療にはステロイドや、ビタミンD3製剤のドボネックス軟膏を使用します。
脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎とは、脂漏部位(頭部、眉毛部、鼻翼周囲、耳介後部、外耳、胸骨部、腋窩、外陰部など)に生じる一時的な刺激性皮膚炎です。
皮脂量が多い脂漏部位に症状が出やすく、頭部からの落屑(ふけ)なども脂漏性皮膚炎による症状の一つである。
マラセチア属真菌(皮膚常在酵母菌)が、皮脂中の中性脂肪をリパーゼで分解する事で生じた遊離脂肪酸が皮膚炎を起こすと考えられています。
脂漏性皮膚炎の治療と予防
生活指導
脂漏性皮膚炎の病因として皮脂の分泌が関係しているため、ストレスや睡眠不足など皮脂の分泌を亢進させる生活習慣を改める必要性を伝える。
身体を清潔に保つためにも、毎日の洗顔や洗髪を徹底し脂漏部位の洗い残しに注意する。
治療薬
症状が軽い場合は、市販のイミダゾール系抗真菌薬であるミコナゾール硝酸塩含有のシャンプー&リンス(コラージュフルフルネクスト等)
症状が強い場合は、イミダゾール系抗真菌薬の外用薬と内服ビタミンB2・B6を投与する。
ニゾラールクリームとは?
有効成分:ケトコナゾール
効能効果:下記の皮膚真菌症の治療
- 白癬:足白癬、体部白癬、股部白癬
- 皮膚カンジダ症:指間糜爛症、間擦疹(乳児寄生菌性紅斑を含む)
- 癜風
- 脂漏性皮膚炎
用法用量
- 白癬、皮膚カンジダ症、癜風
白癬、皮膚カンジダ症、癜風に対しては、1日1回患部に塗布 - 脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎に対しては、1日2回患部に塗布
作用部位: 真菌の細胞膜の主要構成脂質エルゴステロールの生合成酵素(P450)
作用機序: ケトコナゾールがP450の酵素結合部位を遮断してエルゴステロール合成阻害
ラノステロールの酸化的脱メチル反応(P450が触媒)⇒ エルゴステロール
参考文献:今日の治療指針(私はこう治療している:脂漏性皮膚炎)、ニゾラールクリームインタビューフォーム
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