ドプスとリズミックの併用
ある透析患者さんに処方されていた、ドプス(ドロキシドパ)とリズミック(アメジニウム)の記載された処方箋を見た同僚が私に向かって言いました。
「ドプスの添付文書に”イソプレナリン等のカテコールアミン製剤が禁忌”って書いてるんですけど…」
「リズミックはカテコラミン製剤じゃないんですかね?」
「今日の治療薬」では、昇圧薬がカテコラミンとカテコラミン系に分類されています。
カテコラミンには、ドパミンやドブタミン、ドカルパミン、イソプレナリン、アドレナリン、ノルアドレナリン等が該当します。
カテコラミン系には、デノパミン、コルホルシンダロパート、ブクラデシンナトリウム、ファエニレフリン、エチレフリン、ミドドリン、アメジニウム等が該当します。
よってリズミックは、カテコラミン系に分類されています。
「ドプスの添付文書ではリズミック(アメニジウム)は併用注意になっているので、カテコラミン系は禁忌ではないみたいですよ」
ドプスとリズミックの併用に関しては、メーカーのサイトにもQ&Aで記載がありました。
Q.ドプスはリズミックと併用することがありますか?A.リズミックには「透析施行時の血圧低下の改善」の効能・効果があり、ドプスと異なる作用機序を有するため、血液透析患者に対して併用される可能性があります。臨床試験において、リズミック併用の副作用への影響を検討したところ、リズミック併用群での副作用発現率が併用なし群に比べ高く、なかでも血圧上昇の頻度が高いことが分かっています。併用により血圧の異常上昇をきたすことがありますので、併用する場合は注意してください。なお、リズミック(アメジニウムメチル硫酸塩)との併用は、「併用注意」として注意喚起をしています。
イソプレナリンとは?
ドプスの添付文書に禁忌と記載されているカテコラミンのイソプレナリン製剤は、プロタノールとイソメニールです。
イソプレナリンはβ1、β2作用を有して収縮期血圧上昇や拡張期血圧低下そして気管支拡張作用があります。また催不整脈作用があるので服用による誘発に注意が必要とされています。
禁忌の理由はドプスとイソプレナリンの両薬剤が、相加的に心臓刺激作用を増加させる事で不整脈や場合により心停止を起こす恐れがあるからです。
適応症
・イソメニール(dl-イソプレナリン塩酸塩)
適応症:内耳障害に基づくめまい
カテコラミン製剤とは?
カテコラミンまたはカテコールアミンは、アミノ酸の一種であるチロシンから誘導された、カテコールとアミンを化学構造に持つ物質です。
ベンゼン環にヒドロキシ基が二個ついたものと、なんかしらのNHがくっついていれば良さそうです。イソプレナリンの構造式を見てみると下の様になっています。
しかし同じような構造を持っているレボドパは、禁忌でなく併用注意なので構造式は関係ないみたいです。
添付文書にカテコラミン等となっているので、言葉通りにカテコラミンに分類しているものを禁忌と捉えた方が良いのかもしれません。
カテコラミンと言えば国家試験の時に覚えた、カテコールアミンの生合成の語呂合わせが記憶に残っています。
チロシン⇒Lドパ⇒ドパミン⇒Nad⇒アドレナリン
(チロしんで、ドパ、ドパみんな、アドレナリン)
- チロシン⇒Lドパ チロシン水酸化酵素
- Lドパ⇒ドパミン 芳香族 アミノ酸脱炭酸酵素
- ドパミン⇒ノルアドレナリン ドパミンβ水酸化酵素
- ノルアドレナリン⇒アドレナリン Nメチル転移酵素
チロという愛犬が死んでしまい、みんなアドレナリが出て怒っているイメージで覚えていましたが、とても悲しい出来事です…。
話はそれてしまいますが、うちにはベスという愛犬がいました。ベスが亡くなった時は、怒りでなく悲しみと「もっと散歩に連れて行ってあげたらよかったな」といった後悔が残りました。
やはり人間とはやらかった後悔が先に立つみたいです。よって後悔の無いように生きていきたいと思います。
リズミックとは?
名称の由来:“rhythm”と“music”の合成語
リズミカル(軽やかな、調子のよい)からきているそうです。朝起き不良、めまい、立ちくらみなどの低血圧に伴う多彩な愁訴を改善して、日常生活をリズミカルに過ごすことができるという意味合いが込められているそうです。
構造式の違いだけでなくドプスとの作用機序の違いから禁忌でなく併用注意とされているみたいです。
第日本住友製薬のQ&Aサイトにも作用機序の違いに関しての記載がありました。
Q.ドプスとリズミックとの作用機序の違いは?A.ドプスの有効成分であるドロキシドパはノルアドレナリンの前駆物質であり、生体内に広く存在する芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素により直接l-ノルアドレナリンに変換され、効果を発揮します。一方、リズミックの有効成分であるアメジニウムメチル硫酸塩は、ノルアドレナリンと競合して末梢の神経終末に取り込まれ、ノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制します。また、神経終末においてノルアドレナリンの不活性化を抑制し、交感神経機能を亢進させることで作用を示します。
参考文献:リズミック添付文書、ドプス添付文書、プロタノール添付文書、大日本住友製薬サイト、今日の治療薬
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