タミフルDS3%(オセルタミビルリン酸塩)は乳児と幼児で用量が逆転するので注意

タミフル 薬の勉強
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そろそろインフルエンザの季節がやってきました。

去年までは勤務先で処方される薬剤としてイナビルが主流だったので、インフルエンザに罹患した患者様には基本的に薬局内で吸入してもらっていました。よって患者様にお待たせする時間が長く大変だった記憶があります。

今年は1回服用するだけ(症状発現後に可能な限り速やかに開始することが望ましいとされている「症状発現から 48 時間経過前」)で良いとされている、ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル製剤)が簡便なので多くの薬局で処方される事が予想されます。

ちなみにゾフルーザは通常、成人及び 12 歳以上(12歳未満の小児でも40kg以上は同じ)の小児には20mg錠2錠を単回経口投与します。(ただし体重 80kg以上の患者は20mg錠4錠

小児で20kg以上~40kg未満20mg錠1錠

小児で10kg以上20kg未満10mg錠1錠

しかし10kg未満の幼児だと※イナビルの吸入も難しい場合が多いので、タミフルDS3%が出る可能性が考えられます。そこでタミフルの用量を復習しておこうと思い添付文書を再確認してみました。

※小児:‌10歳未満の場合はイナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル)として20mgを単回吸入投与

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タミフル1歳未満への処方は3mg/kgを1日2回5日間の経口投与

タミフル(オセルタミビルリン酸塩)は2016年11月に、新生児と乳児への用法が追加、保険適用されています。

タミフル

中外製薬サイトより引用

添付文書では新生児と乳児(生後1歳未満)に対して、3mg/kgを1日2回5日間、用時懸濁して経口投与するとされています。

以前はタミフルの小児への処方については、1歳以上の用法用量で幼小児の場合は2mg/kgを1日2回5日間のみが承認されていました。

しかし欧米では以前より1歳未満への処方が承認されていた事や、米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインでも、0歳児を含む2歳未満の小児への抗インフルエンザ薬による治療が推奨されていた事から保険適用される運びとなったようです。

用量について、幼小児(1歳以上)が2mg/kgなのに対し、新生児と乳児(生後から1歳未満)は3mg/kgと逆転した状態になっているので注意が必要です。

中外製薬株式会社のメディカルインフォメーション部に問い合わせたところ、欧米での使用例から薬物動態やクリアランスでも問題がなかった事からこの用量での適用となったとの回答がありました。

そして仮に体重によって投与量が逆転する場合があったとしても1歳という年齢を基準に用量を決定して問題ないという事でした。

また医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会においても以下のように記載がありました。

1 歳未満については、本邦での承認はないが、2012 年 12 月に米国で承認(オセルタミビルとして 1 回 3 mg/kg を 1 日 2 回、5 日間投与)されており、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)のガイドラインでは 1 歳未満を含む小児への使用が推奨されている。

インフルエンザウイルス感染症の治療において、国内外の医療環境に大きな違いはないと考えられること、本剤の薬物動態についても、1 歳未満の小児及び新生児における国内臨床試験成績はないものの、1 歳以上の小児では明らかな民族差は認められないことから、1 歳未満の小児に対しても本剤の有効性が期待できると考えられる。

公知申請への該当性に係る報告書(案)より引用

乳幼児は体内水分量が多い

学生時代に習ったADMEにおいて分布(Distribution)について体水分量との関係がありました。特に新生児期は体水分量が約80%と多く、一方で体脂肪、筋肉量は非常に少なくなっています。

よって水溶性薬物の体重あたりの投与量が成人よりも多く設定されている事が多くなっています。タミフルは水溶性なんだろうなと思いインタビューフォームを見てみました。

(2)溶解性
水及びメタノールに溶けやすく、エタノール(95)にやや溶けやすく、N,N-ジメチルアセトアミドに溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。

(6)分配係数
酸性~中性領域で水相に分配し、アルカリ性領域で油相に分配する。
logP=-0.42(pH1)logP=-0.27(pH7)、logP=1.18(pH9)

分配係数を対数で表した場合に、脂溶性はプラス(+)、水溶性はマイナス(-)なので、酸性~中性領域では水溶性で間違いないみたいです。

成長および年齢に伴う身体組成の変化

MSDマニュアルより引用

上記グラフで見てわかるように、新生児期においては水分量が多い一方でたんぱく量が少ないことがわかります。これによってたんぱく結合する薬物比率が低くなります。そして遊離型の薬物が多くなると効果が強く発現しやすいため副作用に注意が必要とされています。

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