日中の意識消失性の眠気ありと患者さんより訴えあり、原因は?

食事性低血圧 役に立つ話
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在宅患者の家族さんより「日中の眠気が強くて話をしている途中で意識を失ったように眠ってしまう、何か薬の変更がありましたか?」との問い合わせがありました。

睡眠導入剤はゾルピデムのみで持ち越しは今まで見られた事はなく、前日の睡眠もしっかりと取れていた様子。

とりあえず朝食後服用の薬剤での副作用として、眠気の強く出る薬がないかを確認しました。

朝食後は、カリウム保持性の利尿薬、過活動膀胱の抗コリン薬、持続性Ca拮抗剤、抗血小板剤などです。

眠気の出そうな薬はほとんどが夕食後服用となっていました。

現在服用中の抗コリン薬には「0.1〜5%未満で傾眠の副作用」があり、重要な基本的注意事項にも「眼調節障害(霧視等)、傾眠が起こることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に従事する場合には注意させること。」の記載がありました。

しかし朝ごはんを食べてから、朝食後の一包化された薬を服用して1時間程度してからとの事でしたので「食事性低血圧」の可能性も疑われました。

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食事性低血圧とは?

食事性低血圧(postprandial hypotension:PPH)は高齢の患者で起こりやすく、特に神経変性疾患、高血圧、糖尿病のある患者さんでよく見られる事が多いといわれています。

この患者さんも高血圧の為に降圧薬、利尿薬を服用しているので、血圧の低下に伴い強く眠気が出る事が考えられます。

食事性低血圧(食後低血圧)の目安としては以下のサイトに記載がありました。

①食事摂取後1時間以内に平均血圧が20mmHg以上低下
②食事摂取後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下
③収縮期血圧が食前100mmHg以上あった場合に90mmHg以下になる

のどれかに該当する場合を陽性としています3)

3) 高橋 昭, 監, 長谷川康博, 他, 編:知っていますか? 食事性低血圧 新たな血圧異常の臨床. 南山堂, 2004.

日本医事新報社サイトより引用

そこで朝食前と食後1時間の血圧差を測定してもらったところ、収縮期血圧が20mmHg程度低下が見られました。

食事性低血圧の作用機序として、食事の消化吸収のためにホルモンが分泌される事で腸への血流が増加、さらに血管抵抗が低下して血圧が低下します。

血圧 = 心拍出量 × 血管末梢抵抗

血圧が低下して脳への循環血流が悪化すると、酸素が不足して眠気が起きると言われています。

よって食事をゆっくりと食べる事で腸への血流増加を抑えたり、炭水化物を控えるなどの工夫が有効とされています。カフェインでの眠気覚ましは日中は良いのですが夜は逆に不眠になるので注意が必要です。

  • 食事はゆっくりと食べる
  • 炭水化物を控える

ナルコレプシーの可能性は?

ナルコレプシーは、日中の過度の眠気や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こることを特徴とする睡眠障害で、突然の筋力低下(情動脱力発作)を伴います。睡眠麻痺、鮮明な夢、幻覚が、入眠時または覚醒時に起こることもあります。

診断を確定するには、睡眠ポリグラフ検査と睡眠潜時反復検査など、睡眠検査室での検査が必要です。

覚醒状態を維持し、他の症状をコントロールするために薬剤を使用します。

治療

  • モダフィニル
  • メチルフェニデートおよびその誘導体,アンフェタミン誘導体,またはγ-ヒドロキシ酪酸ナトリウム
  • レム睡眠抑制作用のある特定の抗うつ薬

MSDマニュアルより引用

ナルコレプシーの主症状としては、以下4つの症状が見られます。
  1. 日中の過度の眠気(excessive daytime sleepiness:EDS)
  2. 情動脱力発作
  3. 入眠時および出眠時幻覚
  4. 睡眠麻痺

この患者さんは日中の過度眠気だけなのですが、4つ全ての症状が見られる必要はないようです。

またナルコレプシーでは夜間の睡眠が障害されて過眠となったり、青年期または若年成人期に発症する事が多いとの事なのでナルコレプシーではないと思われます。

とりあえず今回は、体調の変調(めまいふらつき)や食事の注意点などを伝えておきました。

暖かくなってきて血圧は安定しているようなので、症状が続くようであれば先生に降圧薬の減量などを提案してみようかと思います。

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