在宅訪問に行った女性薬剤師さんが訪問先のスリッパを履いたことでストッキング越しに水虫になった事があるとの事で、それ以来訪問先の共用スリッパを履く事が恐くなり自分専用のスリッパを毎回持って行くようになったそうです。
しかし、たまにスリッパを持参し忘れて訪問先の床面をそのまま歩いた場合には、帰り道にアルコールスプレー消毒を足裏にしているとのお話でした。
自分は男性なのでストッキングよりも厚手の靴下という事もあり、白癬菌の脅威をそこまで気にしたことがなかったのですが、確かに白癬菌が付着した可能性のある靴下のままでは自宅に白癬菌を持ち帰る可能性が十分にあります。
靴下は洗濯や熱湯消毒でも除菌できますし、帰宅後すぐにお風呂に入り足の裏をきれいに洗う事で白癬菌は取り除くことができます。
しかし靴の中に残った白癬菌は3か月以上生存する事もあるそうです。彼女が言うように訪問後はアルコールスプレーを靴下に吹きかけてから自分の靴を履いた方が良いのではないかと思うようになりました。
白癬菌について
水虫の原因となる白癬菌(皮膚糸状菌症)には、トリコフィトン(T.rubrum)、ミクロスポルム(Microsporum)、エピデルモフィトン(Epidermophyton)などの菌種が存在します。
白癬菌は乾燥した環境では大体1か月くらいは生存する事ができ、湿度が高い環境では半年くらい生存していることもあるそうです。
よく言われる大衆浴場の足ふきマットや靴やスリッパ等の履物、絨毯や畳、そして座布団、体重計、爪切りなどにも白癬菌が生存していると言われています。
白癬菌が皮膚に付着した状態からおよそ1~2日位で皮膚の角質層に感染する可能性があります。
白癬菌にアルコール消毒
「今日の治療薬」の消毒薬の抗微生物スペクトルと用途を見たところ、消毒用エタノールとイソプロパノールは中水準の消毒薬になります。
一般細菌や結核菌、そしてエンベロープ有りのウイルスには「●有効」となっていますが、糸状真菌は「▲十分な効果が得られないことがある」との記載がありました。
しかし別の文献によると、アルコールでの白癬菌の消毒方法として10分以上の浸漬消毒が推奨されている事、また消毒薬による白癬菌の残存率を調べた実験では、除菌スプレーで3.4%、ウェルパスで5.4%、0.5%ヒビテン液で6.5%、消毒用エタノールで8.7%とあることからも靴下にアルコールスプレーを噴霧する事は有効であると考えられます。
白癬菌が靴下に付着した可能性のある場合に靴下を履き替えたりする事ができない場合には、乾燥するまで少し気持ちが悪いもののアルコールスプレーを吹きかけておくのも悪くなさそうです。
参考:皮膚真菌症と環境、足白癬患者からバスマットに散布された皮膚糸状菌の除菌方法の検討、靴下布地における白癬菌の発育に関する研究(Japan J. Med. Mycol., Vol. 9, 1968)
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