先日の服薬指導時に、高齢女性患者さんから「この骨の薬って5年以上服用しても大丈夫なんですか?」と聞かれました。
どうやらビスホスホネート製剤を飲み始めた頃に医師から「3~5年位を目安に服用してみましょう」といった内容の事を覚えていらっしゃったようです。
薬歴を見た所、もうすでに5年以上の期間をビスホスホネート製剤であるボノテオ(ミノドロン)を服用されていました。
ビスホスホネートは5年でやめる?
ビスホスホネート製剤の長期服用時の副作用と言えば、顎骨壊死や大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折のリスク上昇が有名かと思われます。
確かに様々なビスホスホネート製剤が発売されだした頃にも、これらの問題は話題となり「5年を目安に継続か休薬を検討する」といった話はよく聞かれていました。
この問題もあって患者さんは5年以上の服用について心配されているようでした。
ビスホスホネート休薬の目安
UK NOGG(UK National Osteoporosis Guideline Group)2013年のビスホスホネート休薬の基準案では、FRAX®(Fracture Risk Assessment Tool)や骨密度をもとに判断する事を推奨しています。
しかし日常の診療現場でUK NOGGによる判断が難しい場合は、以下の4つが治療継続のポイントとなります。
- 新規骨折が生じた場合は骨粗鬆症治療継続
- 既存骨折があり75歳以上であれば治療継続
- 大腿骨近位部骨折の既往があれば治療継続
- ビスホスホネート休薬を検討するのは上記3点を満たさず、かつ治療により大腿骨骨密度が骨粗鬆症診断閾値を上回った場合
患者さんに詳しく話を聞くと、服用を開始してからの新規骨折はなく、年齢は70代前半で、大腿骨近位部骨折の既往歴もないとの事です。
骨密度とYAM値は問題なし
この5年間の服用により、骨密度も改善して同年代の平均以上との事。
DEXA法による骨密度の検査値(BMD、YAM値)を見せてもらったところ、確かに骨密度は改善しているし検査値上での問題はなさそうです。
しかし長期服用時の大腿骨の骨折リスク上昇といった副作用だけを考えるのではなく、ビスホスホネート継続による骨折部位別に行われる予防効果を評価して天秤にかける必要があります。
継続の可否については薬局側で判断するべき内容ではないので、「まず先生のご判断で5年以上服用する事はありますのでご安心ください。患者さんの心配されている長期服用時の大腿骨の骨折リスク上昇は確かにありますが、その他の骨折リスク等との兼ね合いを考えると服用を継続するメリットは大きいと思います」と多少濁した回答になりました。
何となく門前の先生の治療方針と齟齬がない様に…、という気持ちが少なからず出てしまったかもしれません。
最近は患者さんによっては薬に対する関心度が非常に高く、スマホ等から自分が服用している薬の添付文書を読み込んでいる方も多いように感じます。
この患者さんが服用するボノテオの添付文書にも、長期使用患者の非定型骨折のリスク上昇が記載があります。
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よってビスホスホネート製剤の長期服用患者における前駆痛の確認は、今回のようなボノテオであれば月に一度の服薬指導時には薬局側でも必ず確認しておいた方がよいかと思います。
なんとなくDo処方と記載する事がない様に、薬局でも注意したいですね。
8.5 ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性又は軽微な外力による大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折が発現したとの報告がある。
これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数カ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、このような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うこと。
また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の部位の症状等を確認し、X線検査を行うなど、慎重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合には適切な処置を行うこと。
ボノテオ添付文書より引用
参考文献:日本骨粗鬆症学会予防と治療ガイドライン2015年・骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方
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