添付文書の【効能効果】適応と適用の使い分けは?適応外処方に疑義紹介は必要?

保険調剤事務
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薬剤師であれば添付文書の【効能・効果】の欄を見て、どういった病態に効果があるのか?

そしてその病態に適した【用法・用量】は、どの位の量や回数なのかを調べる機会が多いかと思います。

その時に「保険適用?あれ‥保険適応だったかな?」と適応と適用の言葉使いの遣いに不安や疑問を持った事はないでしょうか?

今回は、適応と適用の違いについて調べてみたいと思います。

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適応と適用の言葉の違いは?

まず適応と適用の、日本語の意味の違いから調べてみました。

てき‐おう【適応】の意味 [名](スル)

1 その場の状態・条件などによくあてはまること。「事態に適応した処置」「能力に適応した教育」

2 生物が環境に応じて形態や生理的な性質、習性などを長年月の間に適するように変化させる現象。

3 人間が、外部の環境に適するように行動や意識を変えていくこと。「適応障害」「過剰適応」

法律・規則などを、事例にあてはめて用いること。「会社更生法を適用する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

適応は医療分野においては「適応症」という言葉があるように、治療方法や薬の効果が期待できる病態に使用されます。よって適応外処方のように使用されます。

一方で、適用は法律・規則などを事例に当てはめる事から保険適用のように使用されます。

今回の内容はこれで終わってしまいますので、ついでに適応症と適応外使用についても調べてみる事にしました。

適応症と適応外使用について薬剤師が知っておくべき内容

添付文書の【効能・効果】には、治験での有効性が証明された疾患や症状で厚生労働省が承認したものが記載されています。

つまり添付文書で【効能・効果】に記載されているものが「適応症」となります。

よって医療保険制度が適用されるには、添付文書に記載された【効能・効果】、【用法・用量】で使用されることが原則となっています。

この【効能・効果】、【用法・用量】から外れた使用方法であれば、保険適用から外れ査定や返戻の対象となる可能性があるため疑義紹介をする必要性があります。

しかし添付文書でなく「今日の治療薬」などをみると備考欄に、保険適用となりうる事例として適外(適応外使用)のマーク記載があります。

適応外処方については、社会保険診療報酬支払基金のサイトで審査情報提供事例(薬剤)の審査情報提供事例を薬効コード別に分類されていますのでご覧下さい。

適応外使用の保険適用について、中医協が示した基本的考え方に記載がありました。

適応外処方でも疑義紹介は必要?

適応外処方については、個別診療内容に係る審査において一律に適用されるものではない事や、万が一の処方ミスの可能性を考えると必ず疑義紹介が必要となってきます。

「診療中で忙しい医師に、わかりきった適応外処方の疑義紹介をするのは気が引けるなぁ‥」と思われる薬剤師さんもいらっしゃるかと思いますが、どうぞご安心ください。

適応外処方に関する疑義照会に対する医師の考え方については、古いデータですが日経メディカルの「適応外処方実態調査2009」に記載がありました。

これによると最も多かった回答を併せると9割以上の医師が、薬剤師からの疑義照会を容認している結果がでていますので安心して疑義紹介しましょう。

「処方ミスの可能性も考えられるため、疑義照会をするのはやむを得ない」(52.9%)

「患者への誤った服薬指導を避けるためにも積極的に疑義照会をして処方意図を確認してほしい」(40.7%)

日経メディカルより引用

2009年の時点であっても、他の設問としてあった「疑義照会をする薬剤師は勉強不足」や「効能の説明は医師がしているので薬だけ渡せばよい」と考えている医師はマイノリティだと言う事がわかります。

しかし適応外処方の疑義紹介をして、保険適用がされたとしても「万が一健康被害が起きたら責任はどうなるの?」といった懸案事項として存在するかと思います。

適応外処方で健康被害が生じた場合の法的責任は?

まず適応外処方で健康被害が起こった場合に、医薬品副作用被害救済制度の救済の対象となるかどうかについて調べてみたいと思います。

Pmdaのサイトには「救済の対象とならない場合」として以下のように記載があります。

副作用救済給付の対象にならない場合は、次のとおりです。

  1. 法定予防接種を受けたことによるものである場合
    (任意に予防接種を受けたことによる健康被害は対象になります。)
  2. 医薬品等の製造販売業者などに損害賠償の責任が明らかな場合
  3. 救命のためやむを得ず通常の使用量を超えて医薬品等を使用したことによる健康被害で、 その発生が予め認識されていた等の場合
  4. がんその他の特殊疾病に使用される医薬品等で厚生労働大臣の指定するもの (対象除外医薬品)等による場合(Q5参照。)
  5. 医薬品等の副作用のうち軽度な健康被害や医薬品等の不適正な使用によるもの等である場合
  6. 副作用や障害の程度が軽い場合や請求期限が経過した場合
  7. その他、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で給付の対象にならないと判定された場合

つまり不適正な使用によるものである場合は、副作用被害救済制度の救済の対象となりません。

Pmdaのサイトには「適正な使用」についても記載があります。

「適正な使用」とは、原則的には医薬品等の容器あるいは添付文書に記載されている用法・用量及び使用上の注意に従って使用されることが基本となりますが、個別の事例については、現在の医学・薬学の学問水準に照らして総合的な見地から判断されます。

原則的には容器や添付文書に記載されている用法用量を基本としています。

しかし個別の事例については総合的な見地から判断されますので、適応外処方が必ずしもダメと言う訳ではないようです。

それでは最後に、適応外処方により健康被害が生じた患者から訴えられて裁判となった場合の法的責任について調べてみたいと思います。

国立がんセンターがん対策情報センター所属で医師・弁護士の大磯義一郎先生によると、過去の裁判例では添付文書の順守を求めたものと、適応外使用を認めた判例の両方があるようです。

結論としては、現段階で添付文書に記載されている注意事項については、使用方法及び副作用の予見につき、厳格な順守を求めた最高裁判例がある。しかし、適応外疾患に対する使用に関しては、その当時の適応外薬剤の効果の知見等を種々検討した上で、医師の裁量により適応外疾患への薬剤使用を適法とした地裁判例がある。

つまり適用外使用について総合的に考えると、適用外使用は適応疾患、使用方法のいずれかもしくは双方とも添付文書の記載に則らないものであるから、「適用外使用には明確な適法判断基準は現在のところなく、裁判所によっては、過酷な判断をされる場合がある。」といえよう。

医療ガバナンス学会 臨時 vol 220 「適用外使用における裁判所の考えを考察する(1)」より引用

仮に適応外処方が認められず、裁判で厳しい判決が出た場合は医療従事者に課せられる責任は重大です。

よって適応外使用の処方箋を受けた場合は、必ず疑義紹介をする事。

そしてその使用方法が十分な科学的根拠を持ち、患者からのインフォームドコンセントを得られたものであるのかを慎重に判断して調剤をする必要があります。

参考文献:今日の治療薬(南江堂)、添付文書の読み方(じほう社)

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