漢方薬に精通している薬剤師や薬学部生なら当然知っていると思うのですが、君臣佐使(くんしんさし)という言葉をご存知でしょうか?
漢方薬を構成する生薬の成分にもそれぞれに役割があります。
- 治療の中心となる生薬を君薬
- 君薬の作用を助け強める生薬を臣薬
- 君臣薬の効能を調節し副作用を抑える生薬を佐薬
- 君臣佐薬の補助的役割で漢方薬をのみやすくする生薬を使薬
封建社会の身分的役割である君主や家臣などの言葉に擬して、薬の役割を意味づけていると考えられています。
漢方処方は複数の構成生薬のすべてが同じ重要性をもっているわけではなく、中心となる重要生薬と、その作用を補助し中心生薬が十分薬効を発揮できるようにする生薬で構成されている。
このような役割を君臣佐使(くんしんさし)といい、中心生薬を君薬、君薬の作用を補助し、強める生薬を臣薬、君臣薬の効能を調節する作用をもつ生薬を佐薬、君臣佐薬の補助的な役割をし、処方中の生薬の作用を調節したり、漢方薬を服用しやすくする生薬を使薬と呼ぶ。
例えば、桂皮、芍薬、甘草、生姜、大棗からなる桂枝湯では、桂皮が君薬、芍薬が臣薬、甘草が佐薬、生姜と大棗が使薬とされる。
(2009.5.25 掲載)(2014.7.更新)
公益社団法人日本薬学会サイトより引用
他にも便秘薬で使われる事が多い大黄甘草湯は、君薬として瀉下作用を持つ大黄(主成分はセンノシド)だけでは薬効が強すぎるために、緩和作用を期待して甘草(主成分はグリチルリチン酸)を加えたものになります。
また瘀血(おけつ:血の巡りが悪い状態)を改善する駆瘀血剤(くおけつざい)として有名な、桃核承気湯も主に体力が中等度以上ある実証タイプ(※虚弱な者には使わない)の女性の便秘に使用する事がある漢方薬です。
血流をよくする事でPMS(Premenstual Syndrome:月経前症候群)や産後の精神不安、腰痛、痔、打撲、高血圧の随伴症状の頭痛・肩こり・めまい等にも用いられます。
桃核承気湯では、血の巡りをよくするための君薬として駆瘀血剤の桃仁(トウニン)、瀉下作用を目的として大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウは塩類系下剤である天然の硫酸ナトリウム)が使われています。
桂皮(ケイヒ)は気を巡らせる作用があり通絡や補陽として、甘草(カンゾウ)は緩和作用を目的とする補気や建脾として主薬の働きを補完しています。
こういった主に漢方薬で使われていた言葉が、現在では西洋薬でも使用されるようになっています。
例えばロキソニンを君薬とした場合に、副作用を防ぐ目的で処方されるムコスタは佐薬といった感じです。
様々な処方に関してこのような君臣佐使の考え方で見てみるのも面白いかもしれませんね。
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