一般的には受け付けた処方箋の用法用量に関して、添付文書を確認して記載内容と異なる場合は疑義照会をする事になります。
医師との関係性を忖度して疑義照会をしないといった薬局も見られますが、少なくとも初回は必ず疑義照会をするようにしましょう。
私は当初毎回していたら「今後同じ処方が出ても疑義照会不要です」と言われてしまいました。
適宜増減について
用法用量が添付文書と異なった場合に、疑義照会をするかしないか?の判断材料となるものの一つに適宜増減があります。
適宜増減とは「おおむね通常用量の半量から倍量」と認識がされています。
この文言があると、患者さんの容態にあわせて医師が用量を決定していると考えられるため、大きく逸脱していない限り疑義照会をしない場合が多いです。
適宜増減がない場合は、製薬メーカーが添付文書の記載された用法用量を認めていないと考えられるので疑義照会をする事になります。
※用量が少ない場合は腎機能の低下などを考慮した場合も考えられますが、最大用量を超えている場合は注意が必要です。
薬剤によっては、適宜増減の記載と最大用量(1日〇〇mgまで増量できる等)を制限している場合もあります。
適宜増減ありの薬剤
適宜増減の記載がある場合は、安全性が比較的高い薬剤であったり、適応症が多く使用する用量に幅のある薬剤である事が考えられます。
水溶性だけでなく脂溶性のビタミンD製剤においても、適宜増減が記載されています。
【用法・用量】
本剤は、患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに、投与量を調整する。○慢性腎不全、骨粗鬆症の場合
通常、成人1日1回アルファカルシドールとして0.5~1.0㎍を経口投与する。
ただし、年齢、症状により適宜増減する。
ラシックス(フロセミド)は、生体利用度が個体間や病態によって大きく異なるので、効果が発現する十分な用量を投与する必要があります。
【用法・用量】
通常、成人にはフロセミドとして1日1回40〜80mgを連日又は隔日経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。腎機能不全等の場合にはさらに大量に用いることもある。ただし、悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。
適宜増量、適宜減量の違い
適宜増量の記載がある場合は、患者の体質や容態により薬の効果がみられるには一定の用量が必要な薬剤です。用量の決定には、最低用量から少しづつ増量する必要のある薬である場合が考えられます。
【用法・用量】
通常、1日量グリベンクラミドとして1.25mg~2.5mgを経口投与し、必要に応じ適宜増量して維持量を決定する。ただし、1日最高投与量は10mgとする。投与方法は、原則として1回投与の場合は朝食前又は後、2回投与の場合は朝夕それぞれ食前又は後に経口投与する。
適宜減量の記載がある場合は、患者の体質や状態(腎障害や肝障害)により通常用量が最大用量であると考えられます。副作用の発現を抑えるためにも減量する必要性があります。
アリセプト(ドネペジル)は、高度のアルツハイマー型認知症患者や、レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制に10mgで使用されますが、患者さんによっては下痢や吐き気といった消化器系副作用を訴える事が多く減量される場合を散見します。
高度のアルツハイマー型認知症患者の場合のみ適宜減量の記載があります。医師によっては、5mgを隔日投与で処方したり、細かく6mgや8mgの処方を出す場合もあります。
アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
添付文書通りでない場合は多い
基本的には添付文書の用法用量通りの処方が望ましいのですが、処方箋に記載されてくる用法用量は様々です。
適応外処方や医師の考えに基づく場合が大半ですが、ただの間違いであることもあります。門前の医師との疎通がしっかりと取れている場合は問題ありませんが、面の処方箋だと判別不能なのでやはり疑義照会が必要です。
先ほどのアリセプトの3mg/日の処方は、副作用の発現を抑える目的で処方されますが、1〜2週間を超えて継続して処方される場合が見られます。
高用量の処方で患者が怒りっぽくなったり(易怒性)、下痢など消化器症状の副作用などが見られるとの事でした。ただ製薬会社では3mgの継続は原則として推奨していません。
3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1〜2週間を超えて使用しないこと。
厚生労働省保険局医療課からは、レセプトの摘要欄の記載理由をみて判断するとの連絡があるので疑義照会をして理由を記載するようにしましょう。
【認知症薬】
(問2)認知症治療薬について、患者の症状等により添付文書の増量規定(※)によらず当該規定の用量未満で投与した場合、当該用量未満の認知症治療薬の取扱いはどのようになるか。※ 例えば、ドネペジル塩酸塩錠については、添付文書の「用法・用量」欄において、「通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する」と記載されている。
(答)添付文書の増量規定によらず当該規定の用量未満で投与された認知症治療薬については、平成28年6月1日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡により審査支払機関に対して、一律に査定を行うのではなく、診療報酬明細書の摘要欄に記載されている投与の理由等も参考に、個々の症例に応じて医学的に判断するよう連絡している。
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