【ニュース】10倍量の抗けいれん薬を服用した男児が意識障害

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兵庫県は28日、県立尼崎総合医療センター(尼崎市)の男性医師が今年2月、未就学男児(同市在住)に、誤って適正量の10倍の抗けいれん薬を処方したと発表した。男児は一時軽度の意識障害を起こし救急搬送されたが、その後回復したという。

県によると、男児は2月12日に嘔吐や全身のけいれんで同センターを受診。20代の男性小児科医が胃腸炎の一種と診断した。本来は抗けいれん薬を1日1回、70ミリグラム処方するが、誤って電子カルテに「700ミリグラム」と入力。院外の薬局からファクスで容量を疑う照会もあったが、同医師は服用回数の件だと誤認し、そのまま処方したという。

同センターには、電子カルテに処方の上限量を超えて入力すると警告するシステムがあったが、成人の基準値(1200ミリグラム)しか設定していなかった。今後は子どもの年齢ごとの基準値を設定するという。

神戸新聞NEXTより引用

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処方された薬は?

抗けいれん薬で成人の上限量が1200mgの設定との事なので、テグレトール細粒50%(カルバマゼピン)だった可能性が考えられます。

また嘔吐や全身けいれんの症状で受診して医師が胃腸炎の一種と診断した事から、軽症胃腸炎関連痙攣であったと推測されます。

この場合の小児薬用量は、1回あたり5mg/kgの単回投与(内服不能な場合は胃管投与でも可)とされています。

よって今回の未就学男児の体重は14kgで、年齢が3歳といったところでしょうか?

医師が服用回数の件だと誤認した理由は?

通常、テグレトールが小児の「てんかん痙攣発作等」に使用される場合は1日100~600mgを分割経口投与(分2~3)します。

※小児薬用量 開始量:3~5mg/kg、維持量:5~20mg/kgを(分2~3)
【体重14kgだと最大でも開始量70mgで維持量でも280mg】

薬局側では処方箋から「軽症胃腸炎関連痙攣」に対する処方だとわからない場合、添付文書に記載のある「てんかんの痙攣発作」に対する処方だと考えます。

そして病院への疑義照会内容として「テグレトールは単回投与でなく分割投与でないのか?」といった問い合わせが普段から多く、病院側では「用法用量に関する問い合わせ=服用回数の問い合わせ」といった公式が出来上がっていたのかもしれません。

院外の調剤薬局から疑義照会があったとの事なので、調剤薬局の薬剤師が最後の砦として機能している事は良かったのですが、今回のように医師から「記載の通りでいい」と返答された場合に我々調剤薬局側の対応についても考えさせられました。

再度疑義照会するにも、薬局も病院も忙しい時間帯だと沢山の外来患者さんを待たせている事や病院の医師や看護師さんの診察の手を一時的に止めさせる事、そして一緒に働いている同僚の目にも少なからず躊躇いがあるかと思います。

疑義照会で過量投与だと認識させるには?

今回の件では医師は「服用回数だと誤認した」との事なので、過誤のポイントを絞った疑義照会で即座に相手方に問題点が伝わる文言を考えてみたいと思います。

例えば「小児薬用量の上限を超えております、ご確認をお願い致します。」といった簡潔すぎる疑義照会だと印象に残らないだけでなく、問題点が伝わりにくい可能性があります。

よって疑義照会のポイントとしてこの3点に絞った文言を考えてみたいと思います。

  • 疑問点を明確にする
  • それに伴うリスク
  • 回避方法や代替方法を用意する

軽症胃腸炎関連痙攣だと理解して疑義照会する場合

  • 疑問点「体重の10倍量処方」
  • リスク「中枢神経障害」
  • 回避方法や代替方法「体重あたりの1回量を提示した上で減量を提案」
今回の処方量 700mg/回は通常の10倍量とかなり多いように思われますので、過量投与に伴う中枢神経障害の可能性が考えられます。この男児の年齢と体重からは、70mg/回が適切かと存じますがいかがでしょうか。

上限量でなく「10倍量」といったインパクトのある文言を使用する事で、問題点をしっかりと相手側に伝えることが出来るのではないでしょうか。

過量投与
徴候、症状:最初の徴候、症状は、通常服用1 ~ 3時間後にあらわれる。中枢神経障害(振戦、興奮、痙攣、意識障害、昏睡、脳波変化等)が最も顕著で、心血管系の障害(血圧変化、心電図変化等)は通常は軽度である。また、横紋筋融解症があらわれることがある。

テグレトール添付文書より引用

てんかん発作だと思って疑義照会した場合

  • 疑問点「小児に対する上限600mgを超過」
  • リスク「中枢神経障害」
  • 回避方法や代替方法「体重あたりの最大量を提示した上で減量を提案」
今回の処方量 700mg/回は小児に対する上限量600mgを超過していますので、過量投与に伴う中枢神経障害の可能性が考えられます。男児の体重14kgだと開始量で最大70mg、維持量でも最大280mgかと存じますがいかがでしょうか。

体重あたりの最大量を提示する事でさりげなく減量を提案すれば、服用回数だと誤認する事は少なくなるかもしれません。

小児に対する調剤においては、やはり体重あたりの薬用量を理解して疑義照会する事が重要だと考えさせられました。

体重の聞き取りと、小児薬用量の確認の徹底、そして忙しい時間帯の疑義照会ほど丁寧な対応を心がけたいと思います。

参考文献:実践 小児薬用量ガイド 第3版 じほう社

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